悪魔がウチにおりまして・6
ウチには悪魔がいた。
いきなり帰ってしまった悪魔が。
昨晩のことを思い出しても現実味がない。
そんなことを言い出してしまえば、悪魔がいた日常のほうがよほど現実味がないのだが。
あの羊が置いていった現金。
「この子が使ったお金です。こちらの世界に迷惑をかけるわけにはいきませんので」
ご丁寧に領収書を切り、詳細も書かれていた。
内訳、9割食費。どれだけ食っていたんだ、あの悪魔。
買い込んだシチュー用の食材は昨日のうちに作ってしまった。
悪魔が食べることも考えた上での量。
独りには多すぎるのだが、保存しておく場所が無かった。
いいのだ、一度に作れて手間が省けたと思うことにする。
3日もあれば食べきれるだろう。
今朝のシチューノルマを達成するとこの週末何をしようかスマホを開く。
独りで過ごせる休みなど久しぶりだ。
あの子を連れてける場所など限られていたため、我慢していたことをして楽しむことにしよう。
ウチには悪魔がいた。
休日の自由を奪っていた、悪魔が。
「おいしー!」
悪魔が居たら出来なかったこと、まず思いついたのは外食だ。
あの着ぐるみのような生き物を連れて行っては入店拒否されること請け合い、試したこともなかった。
ましてあれだけの大食漢、外で食べたらいくらになるか分かったものではなかった。
さすがに家に帰ればまだまだ残るシチューがあるため、食事までして腹を満たすわけにはいかない。
近くに出来て話題になっていたカフェでスイーツくらい食べてもバチは当たらないだろう。
サンデーの中にアイスとコーンフレーク、ホイップが巻かれてチョコソースのかかったバナナパフェ。780円。
あの子を連れてきたら喜んだだろうにと悪魔的笑みを浮かべる。
「ズルいです、甘いは別腹なのです」などとあの子がお預けを食らってぷりぷり怒る姿が目に浮かぶ。
パフェを堪能して家路に着く。
明日は独りで何をしようか。
どんなことをしたらあの子をからかえるだろうか。
ウチには悪魔がいた。
少しからかうと、とてもいい反応をしてくれる、悪魔が。