悪魔がウチにおりまして・584
ウチにはイモ虫がいる。
ハエ叩きを振り回しているイモ虫が。
「それ、アンタが振り回してていいの?」
自分ら虫を落とす武器を振り回しているのは結構シュールなのだけど。
「ニンゲンさん、それは虫へのハラスメント!すなわち、虫ハラ!」
アンタの存在がハラスメントでしょうに。
「考えてもごらんなさい!ニンゲンたちもピストルにナイフ、毒薬など使って生きています。それらも!ヒトを滅す!つまり!某がハエ叩きを使っても……あれ?一人称なんでしたっけ」
知らんがなof知らんがな。
「そうだ!ミー!ミーは死にましぇーん!」
トラック用意したら良いの?
もちろんフルアクセルで。
「ところでなんでハエ叩き?」
「よくぞ!お聞きくんなました!上をご覧ください」
イモ虫が指さした先……コイツ指無いのになんで指してるの分かるんだろ?まぁ良いけど、その先に飛んでいるのは巨大なカナブン。
巨大と言っても普段見ているクモ、なんだったらこのイモ虫の方がデカいんだよなぁ。
「さぁ、勇者よ!暗黒より舞い出でたるあの悪魔を仕留めるのです!」
「呼びました?」
リビングで積読消化していた悪魔がにゅっと顔を出す。
「あなた仕留めるの、ハエ叩きでいけるわけナイナイ」
イモ虫は手をパタパタと振る。
「悪魔、カナブン得意?」
「食べたくは無いです」
言ってないよ、食べろとはさすがに。
「アンタの方が素早いでしょ、逃がしたくないし」
「よっ!大統領!悪魔の鏡!」
イモ虫はもう1本ハエ叩きを取り出して左右に振っている。
「イモ虫さん、さすがにその程度のおだてで調子に乗るボクじゃないです。さ!ハエ叩きを貸すのです!」
予想通りチョロいなぁ。
ハエ叩きを受け取るとカナブンに向き合う悪魔。
悪魔VSカナブン!勝敗の結果は!
先に動いたのはイモ虫!網戸を開けた!
それに呼応したカナブン!外に逃げ出した!
ハエ叩きを構えた悪魔、泣いている!
「ボクは、いったいなんのために……」
ガチで凹むんじゃないよ。
「ミミさん……、世の中は無情……努力が実るとは限らない……そのことが知れてよかっとぅ!?」
イモ虫がうだうだ言ってる間に空きビンを取ってきてイモ虫に被せる。
「悪魔、好きにしていいよ」
『鬼畜っ!バケモノっ!」
ウチには悪魔がいる。
ビンを念入りにシェイクしている悪魔が。




