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悪魔がウチにおりまして・582

ウチには狐がいる。

コンコンと鳴いている狐が。


「ごんちゃん!死んじゃダメですー!」

「ミミちゃん、うるさいです」

コンコン、とは鳴いているのではなく咳き込んでいる声でした。

悪魔大慌てで走り回っているが狐は冷静に……というか眉間にシワを寄せて睨んでいる。

「しかし、狐ちゃんが風邪なんて珍しいわね」

「申し訳ございません。ちなみにお粥は苦手です」

呂律が回っているんだからよほどしんどいんだろうなぁ。

「悪魔ー、キッチンのお粥食べていいよー、何なら食べられる?」

「ニンゲンー!早く作るです!米なら買って来るですー!」

だからお粥食べられないって言ってるじゃない。

「おきつねうどん……」

言い方が可愛い。

「はいはい、作ってきます」

「ニンゲン殿、痛み入ります……」

けほけほとむせながら頭に乗った氷枕を整える。

しかし、普段風邪を引かない子はこじらせるって本当ね。

「ニンゲンさん、ごんちゃんは無事ですか」

キッチンに向かうとモグラがカゴにたくさんの野菜を持ってそわそわしている。

「ニンゲンー!このお粥薄いのです!」

鍋ごと、おたまでお粥を食べる悪魔。

病人用だ、薄く作るだろうよ。

「落ち着いてはいるよ。うどんが良いって」

血迷いながらお粥をすする悪魔をどけて麺つゆを取り出して火にかける。

「悪魔、うどんひと玉貰うわね」

いつも牛の店に卸しているうどんをひと玉かっぱらい、お湯を沸かしてタイマーセットをしておく。

「狐ちゃんも風邪引くのね」

「普通は引きません。たぶん色々でしょう。疲れとか疲れとか疲れとか」

疲れしかないだろう。

「ごんちゃんはあっちのお仕事は穢れ回りがメイン……なので還りがある時もあります」

走り回ってる悪魔の代わりにモグラが狐の部屋をちらちら見ながらそんなことを言っている。

やっぱり心配なんだ。

「ニンゲン!うどん!うどんならたくさんあるです!全部茹でていいですー!」

それで困るのザリガニだから辞めなさい。

うどんをお湯に入れて悪魔を踏みつけて抑える。

「当たり前にミミちゃんの上に乗っているの、突っ込むべきなんでしょうね」

この悪魔が騒がしいのが悪い。うぱ、つゆに砂糖入れないで。

「しかし、ゆっくりもできないのね」

狐を心配しているのは間違いない。心配の方法が独特だけどね。


ウチには狐がいる。

「七味貰えます?」

風邪引いててダメに決まってるでしょ。

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