悪魔がウチにおりまして・579
ウチには悪魔がいる。
山積みの本に囲まれている悪魔が。
朝からリビングのテーブルでココアを飲みながら読書をしている。
「それだけの本、どこに置いておいたのよ」
座った悪魔が隠れるほどの高さの本が合計4つ。
それを吟味するように、噛みしめるように読んでいた。
「ちゃんと部屋に収まっていたじゃないですかー」
それは確かに。
「本は1度逃すともう手に入らないことも多いですから。積読は貯金です」
そう、こう見えてこのゆるキャラは本を読む。
しかも雑食。
「今のお好みは?」
「えー……今読んでるのは『エクソシストは眠らない』ですね」
本当にアンタが読んでいい物じゃないんだよなぁ。
「コレ、すごいのです。日本の作家なんですけどたぶん知り合いの悪魔居ます。設定がリアルすぎるのです」
悪魔は目をくりくりと動かしながら持っていた本をこちらに倒す。
「ほら、ここで悪魔が歩いている描写があります。でも、無音って書いてあるんです。これは悪魔を知っていないと書けません」
音を鳴らしながら歩く子に言われてもね。
「まだあります。ヒトを騙すときの、この描写。『ヒトにタバコを渡した』とあります。これは欧米担当の悪魔に見られる勧誘です」
「でも、作者は日本人なのよね?」
「はいぃ……まぁ、出張先間違える悪魔もいますし」
……アンタの場合、何を間違ったのだろうか。
私の目線に気付いたのか悪魔はねっとりとした視線をこちらに向けてくる。
「ニンゲン、別にボクは間違えてませんよ?あっちは営業、ボクは管理です」
「アンタ、堕落させるためって言ってたじゃない」
「あー、本面白い」
それ、上下逆だけど?
本をパタンと閉じるとひとつ咳払い。
「ここに来た当時はボクも営業でした。で、堕落させるために日夜勤しんでおりました……チャプター、ワン……」
「クローズ」
いきなりムーディな曲を流すんじゃない。
「まぁ、羊さんが独立したのでトコロテンで管理側に」
「それが一番納得できないんだけど?」
コイツに管理能力あるように思えないし。
「ぬわぁに言ってるですか、ニンゲン!ボクは今部下からも『もう会社に来なくて良いですよ』って絶大の信頼があるんです!」
……やめろ!?その台詞、本当に怖いぞ!?
でも、考えたら専務からもサボってたら矢文飛んでくるから評価は高い、のか?
「ふふんっ。ちなみにたまに部下に言われます。『その管理能力、なんでプライベートで発揮できないんですか』って」
バカにされてるよ!?
ウチには悪魔がいる。
「コレ、みんなで行ったバーベキューです」
あ、本当に楽しそう。




