悪魔がウチにおりまして・577
ウチには悪魔がいる。
せわしなく踊っている悪魔が。
もし、もしだ。
これでドタバタと足音をさせていようものなら叱って黙らせることもできた。
しかし、そこの抜かりはなかった。
コイツ、無音で踊ってやがる。
「悪魔、どうしたのよ(うるさい)」
「五月病です!」
アグレッシブな五月病もあったものです。
「ぐだれ、五月病なら」
「なぜですか!五月病とは仕事に行きたくない周期と聞きます!ならば!仕事に行きたくなければそれは五月病とげふぅ!?」
ごめん、暑苦しい。
「アンタの場合、いつも仕事したくないんでしょ」
「ですー。ニンゲンは仕事好きなのですか、ブラックなのですか?」
聞き方に語弊がある!
「ミミ君!良いですね、五月病!」
ややこしい羊が湧いて来た。
「……羊さんに賛同されると痛い目を見る気がします」
悪魔が裏切った!?
「ミミ君、今日はヴァン・ホテーンを持ってきてます」
それ、絶対パチモンじゃん。
「ひっつじさぁん!10年くらいついて行きますぅ!」
絶妙にリアルな数字やめなさい。
「羊も五月病?」
「いえ。そんなことになっていたら妻に雷落とされます」
神ちゃんの雷って、物理じゃない。
「それでミミ君!せっかくなので五月病を満喫しましょう!」
満喫したくないくらい疲れてるから五月病なのでは?と思ったけど、さっきハッスルしていたから満喫で合ってるのか。
「羊さん!どうすれば良いですか!ボクはなりたいのです、五月病のプロに!」
そのプロフェッショナル、見たくねー。
「良いのですか、ミミ君……五月病のプロは厳しいですよ」
クモ、ゴメン。お煎餅とお茶お願い。
「覚悟の上です!」
「よろしい……では、始めましょう。プロ五月病への道を!」
その後の2匹をお茶を飲みながら様子を眺めていた。
ひたすらに横になり、布団にくるまってココアを飲む。
その時にポテトチップを食べるのを忘れない。
要するにだらだらー、ぐだぐだー、ふにゃふにゃーっとしていただけである。
「……これでプロになれるです?」
「さぁ?」
とりあえず休めたんだから良いんじゃない?
ウチには悪魔がいる。
寝っ転がりながら首を傾げている悪魔が。




