悪魔がウチにおりまして・574
ウチには悪魔がいる。
なんかやさぐれている悪魔が。
「なぜ!休みは!終わってしまうのか!」
うん、通常運転だ。
「仕事してるから生活できるんでしょ」
「ええい、資本主義のイヌめっ」
とんでもなく失礼な誹りを受けましたけど!?
「良いですか、ニンゲン!生きるために働くのであれば人生の1/3を浪費しているのです!それで良いのですか、否ぁ!」
なんか面白そうだから三角座りしましょ。
「生きるとは、何かを成して軌跡を遺すこと!しかぁし!このままの流れでは世界の歯車になることが精いっぱい、それで良いのか!」
あ、クモ。ポップコーンとコーラとはわかっていますな。
「クモちゃん、ボクにもコーラー。んぐっんぐっぷはぁ!立てよ国民、国民よ、立てぇ!」
クモは悪魔の足元にミカン箱を置く。
「ありがとです。奇しくも今日は7月4日。独立の記念日であぁる!」
違うぞー、絶賛五月病真っ最中だぞー。
ミカン箱を踏みしめた悪魔は拳を高々と突き上げる。
「さぁ!労働から解放される時だ!その念願が叶ったときボクは父の元に旅立つであろう!ジーク……」
「はいストーップ」
固有名詞をこぼしそうになったので頭にハンマーをぶつけて黙らせる。
頭部に直撃を受けた悪魔は「はぅっ」と呻くとその場で崩れ落ちた。
うぱが悪魔の足を突くとぴくぴく痙攣した。
よし生きてる。
「なんでアンタそんなに荒ぶってるのよ」
理由は聞いてあげるのも情けというものでしょう。
「休みが、足りないのです……あと3日、いや1日で良いのです……」
床に這いつくばったままこちらを向く。
涙が重力に逆らって横に流れている。どうやってんだ。
「いうてたくさん休んだじゃない」
「足らなーい。せめて倍ー」
欲を出してきやがった。
「ところで今日は仕事行ったの?」
「休みました」
勝手に延長戦してるじゃない。
「良いのですー、最近部下も優秀ですしー。週3回くらい進捗確認すれば良いのですー」
何気コイツ本当に良い立場にいた。
「ふっふっふ。ボクはすごいのです……矢文!」
悪魔は窓に飛んでいきカラリと開けた。眉間に刺さる矢文。
「なになに……『明日は来るように、ソロモン』専務、キレてます」
自業自得でしょ。
ウチには悪魔がいる。
角がしなびている悪魔が……そこ、しおれるのね。




