悪魔がウチにおりまして・569
ウチには悪魔がいる。
リビングでろくろをブレイブしている悪魔が。
「場所考えろー!!」
さわやかな朝に泥をまき散らしている悪魔に思わず大声を出してしまった。
「ニンゲン!どうせ夢です!明日には汚れも無くなってますから!」
掃除してるんだよ!枠外で!
ほら見なさい!クモが雑巾用意してる!ありがとう!
「この前『ろくロック』を見ましてー」
話を!進めるな!
言わないよ?「へぇ、それ何?アニメ?」とか聞ける状況じゃないのよ!
「ろくろを回しながら邪を浄化するアニメでしてー」
アンタだよ、アンタ!
今この部屋に汚れという邪をまき散らしてるのは!
クモ、コイツにやらせるから掃除しなくて結構!
「ニンゲン殿、朝から何を……」
目を擦りながら部屋から出てきた狐が……消えた!?
気が付くと壁にめり込む悪魔と、鼻先を突き刺している狐がいる。
「ミミちゃん、某のお部屋はキライですか?」
「ごんちゃん、いつも安心して暮らしています」
「結構なことです。しかし、某にも不備があったかも知れません。さぁ、教えてください。何かあるのであれば改善しますので」
狐って本当に怒ってる時って滑舌直るんだよなぁ。
つまり今ブチ切れているということだ。
「ごんちゃん、ごめんなさいです」
「何を謝ることがございましょう。快適な生活環境を提供できなくて汗顔の至りです。こんなに、こんなに泥だらけのお部屋しかご用意できず、誠に申し訳ございません」
クモ、逃げるな!私を置き去りにしないでください頼むから!
「この泥はボクのろくろのせいです、すみません」
「ほう、このように、床に、掃除するのも大変な泥にまみれているのも、最近某の出番が少ないのも全部全部ミミちゃんのせいだということで?」
なんか愚痴った!?
「それはボク関係……いたいですすみません」
メリッと圧をかけられた悪魔は即謝る。
「いえいえ、謝らないでください。何をすればいいか、わかりますか?」
「掃除します」
「あら、ありがたいですね。某、お散歩に行ってきます。30分ほどで戻ります、ね?」
「ごんちゃん、30分じゃ」
「おや15分にしたくなりました」
「10分で仕上げます!!!」
悪魔の言葉を聞くと狐はゆらりと玄関から出ていった。
ウチには悪魔がいる。
残像が見える速度で掃除をしている悪魔が。




