悪魔がウチにおりまして・567
ウチには悪魔がいる。
いつもいつも突拍子の無いことを言い始める悪魔が。
「ニンゲン!プールに行きましょう!」
悪魔が室内なのにゴーグルとシュノーケルを付けてそんなことを言って来る。
「クモ、ヘソ天してどうしたのー?撫でるー?」
「ニンゲン!クモちゃんに!ヘソは!無い!」
そんなことは知ってます。バカにしないでいただきたい。
クモの腹を撫でながら悪魔の格好をまじまじと眺める。
「悪魔、それ全裸にゴーグルじゃない?」
クモが「せくはら」と糸で文字を作る。
おー、お主。今、腹を触れている者に抵抗するなど愚かな。
クモの腹部をくすぐっていると悪魔が手を合わせている。
「大丈夫です!akumazonでニンゲン用の水着も買いました!」
その言い方、自分の水着か、私の水着か判断に困るぞー。
「ていうかね。ここら辺にプールは無いの。おわかり?」
「え!?トーキョーですよね?プールにクラブ、30階以上のビルディングが立ち並ぶトーキョーですよねー!」
アンタは毎日うろついてて気付いてないのかい?
この町内で1番高いビルはここだということに。
「悪意を感じまちた。そう、某の城をバカにする悪意が」
天井裏から狐が降りてくる。
どこにスタンバってたのよ。
「もしかして、このためだけに天井裏に?」
「なんのことですか?曲者がいる気配がちたので」
いるわけが無いでしょう。
「ごんちゃん!ボクは行きたいのです!究極のプールに!」
「ならば見せて差ち上げましょう!……なんて言うと思います?」
狐にあるまじきカワボ!?
コレ、呪わば穴二つってこと!?
「ミミ殿が言う究極のプールが想像できません。ゆえに見せられません。諦めてください」
クモの腹を撫でながら淡々と語る狐。
「……クモ殿の腹部、こうなってたのですね……」
まぁ、なかなか見れるものじゃないからねー。
「えー、みんなノリ悪いですー。クモちゃん、一緒に行きませんかー?」
悪魔までなでなで参戦。クモ、脚を開き無抵抗。
プールには「おぼれる」と答えていく気はない様子。
「で、悪魔の考える究極のプールって?」
「ソーメンが流れてるのですー」
……はい?
「それ、入るの?」
「何言ってるですか、流れてきたソーメンを掬うです」
悪魔の言葉に狐と顔を見合わせる。
「流しそうめんなら、今度やろ?」
「本当ですかー!ニンゲン、優しいですー!」
ウチにはクモがいる。
「おこして」と糸でアピールしているクモが。




