悪魔がウチにおりまして・565
ウチには悪魔がいる。
笑顔でスマホをスマスマしている悪魔が。
「ニンゲン!映画を観に」
「行かない」
ウチには悪魔がいる。
がっくりと項垂れて……。
「項垂れてないですー!なんですか!コミュニケーション拒否ですか!家庭内別居ですか!育児放棄ですかー!」
自分の10倍以上生きてるの確定している子どもなんていりません。
「いきなり何よ、映画ならそれなりに準備しないとでしょ?」
上映時間だけじゃない。
移動やらそのあとの感想カフェとかでまるっと4時間無くなるんだから。
ちゃんと予定を決めて前後の予定を済ませる準備をさせて欲しいものである。
「ほら、今は春の大型連休です。つまりは映画を観なければならないのです!」
きゅぴーんっ!
1・そんな決まりはありません。
2・最近ちゃんとゴールデンウィークと言ってます。
つまりはテレビを見たのね。
「最近何をやってるか知らないし」
そんなことを言うと朝から鮭茶漬けをしゃばってた狐がお茶碗を置いた後、箸を落とした。
「わざと?掃除する?」
「ちます。それよりもニンゲン殿、今公開中の映画をご存じない?」
あれ?コイツも映画好きだったっけ?
「ごんちゃん!あれ?昔映画観たら目がしぱしぱするって言ってませんでした?」
「それは白黒のせいだったと最近わかったのです。ミミ殿、某でも良いのなら是非映画に」
狐、30年以上ブランクがあってハマったのか。
「ふたりで行っておいで。もし面白そうなのやってたら私も行くかもだけど」
映画、キライじゃないし。
「えっとですねぇ……『生きる・ハード』と『バック・トゥ・ザ・カバン』、あとは『民台本』ですかねぇ」
……さぁ、元ネタなんだろね!?
「うん、行かない」
「某も結構です」
狐の手のひら返し!悪魔に666のダメージ!
「ホワイ!?どれも名作のオマージュですのに!?」
だから行かないんだよ、地雷でしかないだろ。
「ブルーライトカットのメガネをどこかに置いてきてちまった気がしてます」
狐、断る理由下手か!
「良いです、良いです!ボクひとりで観に行くですー!」
地雷子ちゃんに変化すると財布片手に飛び出して行くのだった。
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン、オマージュとパクリは違うと思うのです……」
なんか、かわいそうに見える悪魔が。




