悪魔がウチにおりまして・564
ウチには悪魔がいる。
ウイスキーに炭酸を注いでいる悪魔が。
「第2回!お花見ですー!ニンゲン、今日のお弁当は何ですか!?」
「サバ缶」
「エエ……?」
露骨に嫌そうな顔するなよー。
「フライドチキンとビスケットもあるわよ」
もちろんチェーン、偉大なりサンダース。
「ニンゲン!お花見なのになんですか!気合はどうした!舐めてるのかー!」
「だってアンタ、タブレットじゃない」
悪魔が顔の横に手をもっていく。
アンタの耳はそこに無い。
そう、今見ている桜はタブレットに移っているアルバム。
何回も切り替わっているあたり、かなりたくさんの写真が入れられているのだろう。
「だって!この前行ったとき!咲いてなかった!咲いて無かったのです!」
それは自然なんだから仕方ないでしょう。
てっきり花より団子と思ってたけど、この子花も花で愛でるらしい。
「本当は桜の花びらがおちょこに落ちてきたところに『これも風流』とか言ってくいっとしたいのです!」
えっと、純粋に悪魔がそんな粋なことするイメージないのですが。
「ほら、うぱちゃんも!お花見したいと言ってます!」
うぱは「いちご食べたい」と書かれたプラカードを……花見関係ないのよ、いちごは。
「それならハイボール作ってないでとっくりとおちょこじゃない?」
「ニンゲン、何言ってるです。写真から花びらはこぼれません!」
……確かに!なんて言うと思いました?
「要するに騒ぎたいだけでしょー?ほかのヤツらも誘えばよかったじゃない」
宴会なら人数が多い方が良いでしょ。
「……みんな忙しいって」
フラれた後でしたか。
私は自宅で悪魔とお昼食べるだけだから嫌ではないけどさ。
「お花見っぽいことしたいならそういえばよかったのに」
「だってぇ、もう桜無いですしぃ……」
「それはそうだけどさ。明日、ピクニックがてら河原でも行く?」
悪魔の顔がぱぁっと明るくなる。
「良いのですか?良いのですね!あまあまな卵焼きとうさちゃんリンゴが良いのです!」
ド定番のピクニックメニューを指定してくる。
可愛いところもあるではないか。
「わかった、わかった。急だからふたりで行こうね」
「はいっ!」
こういうところ、素直でかわいいのよねー。
明くる日。
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン、滝の雨です」
たぶん、日ごろの行いの悪い悪魔が。




