悪魔がウチにおりまして・563
ウチには悪魔がいる。
真剣に狙いを定める悪魔が。
「オンユアマーク。レディ。ターゲットロック。スリー、トゥー、ワン……ファイア」
悪魔が押したボタンに連動し、目標に降下する。
みるみる高度が下がっていき、目標へ……。
ガっ!ガリっ!
狙いは逸れてしまい、ツメは箱にぶつかって上に戻っていく。
「みぃ!?ニンゲン!もう100円です!」
さっきから悪魔が繰り返しているのはフィギュアのクレーンゲーム。
ちなみにこれで5回目だった。
「またぁ?さっきから惜しくも無いよ?」
小銭入れ(悪魔の物)から100円を渡すと躊躇なく機械に入れた。
「ここまで出したのなら!取らないと損なのです!」
コイツギャンブルやってなくてよかったぁ。
再び降りていくクレーン、今度は箱に当たることも無く素通りしていく。
「みぃ!?!?ニンゲン!こうなったら500円です!」
おぉ、沼ってる。
悪魔の狙うフィギュアは「超合体ロボ・グレイトスゴインデス」という……まぁ、個人の趣味ですよね。
「渡すのは良いけど、アンタ下手過ぎて無駄じゃない?同じの売ってたら買ったほうが」
「ぬぁに言ってるです!ニンゲン!」
悪魔は私に指を向けてくる。
反射的に掴んで逆関節を極めてしまう。
「ニンゲン?お外でそれはアカンです。ほら、指折れてます」
大丈夫、一旦変化解けばすぐに戻るから。
「話進めよ?」
「このグレイトスゴインデスはプライズ限定です、お店で売ってないのです!……ねぇ、指痛いです」
へぇ、そんなのあるんだ?
曲がった指を本来の方向に戻すと「み”っ」と悲鳴を上げた。
「なので、ここで、逃すと……ニンゲン、指痛いです」
泣くなよー……原因私か。
「それなら貸しなさい」
悪魔の財布から100円を取り出すと機械に入れる。
えっと、箱がこの角度で、ツメがこうなってるでしょ……。
縦横ボタンを駆使してクレーンを落とす。
爪を開きするする降りていくクレーン。
中心からズレていたクレーンは見事箱の隙間に突き刺さった。
箱が持ち上がると爪に突き刺さったまま獲得口に運ばれていく。
ゴトンっと落ちた箱を悪魔に渡す。
「はい、これでいい?」
「……卑怯です」
なんでだよ!
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン、それをできるならなんで最初からやってくれなかったのですか?」
「だって自分で取りたいかなって」
「悪魔です」
アンタだよ!




