悪魔がウチにおりまして・562
ウチには悪魔がいる。
コモンずを従えている悪魔が。
「ブチ、そこホチキスお願いします」
悪魔に言われた通りホチキスにカカト落とししてパッチンする子グモ。
「アンタ、自分の仕事をこの子たちに手伝わせてるの?」
労働基準法はどうなってるのよ。
「ちゃんとお給料払ってるですー。と言ってもお金使えないのでご飯奢るだけですが」
クモにご飯奢って仕事頼んでる悪魔はプライドを売り渡したのか。
「クモー、子どもが不当に搾取されているー」
保護者なのかわからないけどクモに報告を入れる。
今の時間ならロフトで寝てるはずだし。
ひょっこり顔を出したクモは両手で大きな丸を作っている。
口をむぐむぐ、少し飛び出しているのはたぶんチーカマ。
コイツ……買収されてる!?
「将を射んと欲すれば、馬ごとドーン!です」
うん、絶対違うな?言葉も使い方も。
ただ、使ってるのはブチだけっぽい。
その周囲を歩いているクモに指示を出していない。
「悪魔、今回のバイトはブチだけ?」
「ですです。この子たち、食べる量多いのです、3人前くらい食べるのです。みんなに頼んだら破産してしまいます」
5人前食べる悪魔が言うな。
来たばっかりの時から働きもせず……。
「おぉっと!?ほらブチ!仕事が遅れます!パッチンパッチンですー!」
ち……。読者も忘れているであろう初期悪魔の小憎たらしさを知らしめて行こうと思ったのに。
「それにしても手伝うのはホチキスだけ?てっきりこき使うかと」
「ニンゲン、ボクの事なんだと思ってるです?」
「悪魔」
「ニュアンスが違う!?」
珍しい悪魔のツッコミな気がします。
「あのですね、別にボクから頼んでないですよ?この子たちが手伝いたいって言うからやってもらってるです」
うっそだぁ、ご飯奢るんでしょ?
「証拠です。ブチ以外ー。ご飯無くても良いなら手伝って良いですー」
悪魔の言葉にブチは毛を逆立たせ、ロフトからコモンずが飛び降りてきた。
ホチキスの前に整列、挟んでいい書類を今か今かと揺れて待つ。
「ね?」
「なんで?」
「知らんです。ホチキスとかコンパスが好きです」
そっかぁ。
なんか割と初めて理解を諦めたかもしれない。
ウチにはコモンずがいる。
「今度何が好きか実験しない?」
「それ、アリですね」
いつかコモンずクエストが繰り広げられるのかな?




