悪魔がウチにおりまして・556
ウチには悪魔がいる。
割り箸鉄砲を2丁構えている悪魔が。
「出たです、大魔王ニンゲン!我が正義の剣を受けるがいいー!」
「コモンず、相手してあげて」
もはやツッコむ気にもならず悪魔にコモンずをけしかける。
私の号令を待たずして子グモたちはジャンプしながら悪魔に突撃していく。
「くぅ、卑怯者ー。まずはお前たちから相手してやるですー!」
悪魔はまんざらでもない様子で割り箸に輪ゴムをセットしていく。
おーい、置いたスキに鉄砲1丁盗まれてるぞー。
こう見てると、同じに見える子グモたちもそれぞれ個性があるんだと気付く。
悪魔に突撃してったヤツは毎回1番に向かってる気がする。
その後ろで他の子に紛れて悪魔の攻撃避けてるヤツもいる。
ちなみに悪魔から奪った割り箸鉄砲を使って遊ぶコンビはよく一緒にいるセット。
……なんで私はクモの見分けがつくようになっているのだ!?
「くぅ!ブチ!貴様は永遠のライバルですー!」
どうやら悪魔にも見分けがついているようです。
「はい、整列!」
ピタリと止まるコモンずと悪魔。
悪魔は別に動いてていいよ。
止まったは良いけどこっちにすり寄ってくるコモンず。
なんか本来この光景も逃げるべきなんだろうけど、メーター近いクモと一緒に生活してたら10センチくらいなら、ねぇ。
「ニンゲン、この子たち15センチ越えてます」
悪魔が定規を持ってきて子グモの身長を測っている。
まぁ、誤差でしょ。ここまで来たら。
「はい、みんな背中向けるー」
手を叩いてこの子たちに背中を向けてもらう。
顔で覚えるなんて無理、柄で覚えないと。
「悪魔、アンタさっきブチって言ってたのは?」
「この子ですー。1番やんちゃでボクと永遠のライバルです」
クモとライバル争いしてていいのかさておき、悪魔が指さした子はなるほど、背中にまだらブチがあった。
さっきまで割り箸鉄砲いじっていたのは背中の模様に特徴は無かったが、脚の先だけ色が違う。
「この子はクツシタですー」
なるほど、靴下履いているように見えなくもない。
「アンタ全部見分け付いてるの?」
尋ねると悪魔は手を振っている。
「無理です。増えるし、紛れるし、柄も時々変わります」
悪魔でも無理なら誰が見分けられるというのか。
「クモちゃんは全員区別付いているみたいですー」
同じ種族にしかわからない特徴あるのかしら?
ちなみにコモンずは自分の名前を理解しているっぽい。
「クツシター」
私が呼ぶと1匹だけ脚をあげた。賢い。
ウチにはクモがたくさんいる。
「時々ウソつくので気を付けてくださいー」
「騙してくるの!?」
ただでさえ数が多いのに!




