悪魔がウチにおりまして・551
ウチにはクモがいる。
リビングにドーンと座っているクモが。
これが悪魔や羊であればそのまま掃除機をかけるんですが、今回居座っているのがクモ。
何かあったのではと心配になる。
そして、クモであることの大いなる問題があるとしたら会話ができないことなんだよね。
「クモ、どうしたの。どこか痛い?」
私の言葉にクモは目を開けてこちらを見て首を振った。
幸いこちらの言葉はわかってくれるから助かる。
「珍しいじゃない。何かある?」
普段クモは自分で作ったクモの巣、通称ロフトの上で寝てるから床に降りてくるのは私はそんなに見ない。
こんな風に下に降りてきて、しかも微動だにせず部屋の中心で目を閉じているのだから気になってしょうがない。
「ニンゲンさんって、虫平気な人種なんですねー」
そんなことを言いながら羊の担当は持ってきたティーバッグで紅茶を入れている。
「あの、あなたこの子見て平気なんですか」
平気であって良いわきゃねぇんですけど。
しかし担当はぱりんとせんべいをかじる。
「あのですね、小説書く羊に甘い物好きな毛むくじゃらでしょ?今更デカいクモがいたところで気にしませんて」
気にしたほうが良いと思う。
いや、この子は安全だけど。
「ほら、クモちゃーん?なんでそんなご機嫌斜めなのかなー?」
せんべいをふりふりクモに話しかける担当。
このヒト、本当にヒトなのだろうか。
「ふむふむ。最近子どもが反抗期で言うこと聞いてくれないのねー」
「わかるの!?」
この担当、本当にバケモノなんじゃないのか!?
担当はふふんと鼻を鳴らす。
「私くらい文章に関わってたら読解できるのです。クモちゃん、いい?子どもは自分の物では……おっと、もう戻らないと」
クモに諭していた時、担当のスマホが鳴った。
「それじゃ!今度はクッキーと焙じ茶を持ってきますね!」
その絶妙にセンス無い組み合わせをどうにかしてほしいものである。
担当が部屋から出ていくとクモは立ち上がると自分のロフトに登っていく。
「クモ、もしかして担当が好き?」
クモは目を閉じてゆっくり首を振る。
「ならなんで?」
クモはロフトから降りてきて紙に書き書き。
「にんげん、まもる」
……うん、ずいぶんと嫌われてるね、担当さん!
ウチにはクモがいる。
「ニンゲン、今日のご飯なんで豪華です?」
「えー、普通じゃない?」
「クモちゃんのお皿、山盛りです」
クモは嬉しそうにお肉にかぶりついていた。




