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悪魔がウチにおりまして・544

ウチには悪魔がいる。

頭からキノコが生えている悪魔が。


「悪魔、最近鏡見た?」

「もちろんじゃないですかー、お風呂に入ればいつでも見ることになるじゃないです……なんですか?コレ」

手鏡を向けると自分の頭に生えているキノコを指さす。

私もそれを聞きたいんだが?

「ニンゲン、これ食べられると思いますか?」

「やめたほうが良いと思うよ?」

自分の頭にあるキノコに食欲の湧くコイツの精神もなかなかに強いよね。

「こっちの世界に寄生するキノコあるらしいよ、そのまま本人乗っ取るらしいけど」

「……ニンゲン、お別れ、かも知れないのですね……」

悪魔は涙ぐみながら付箋を取り出す。遺書を書くんじゃない。

「実際、これ何なのかわからないからお医者に行こう?歯医者とか」

「ニンゲン、それなら死にます」

そこまで嫌か!?

「そのほかにわかりそうなの、誰もいないでしょ?」

「おや、ミミ君。ヤドリダケなんか生やしてラッキーですね」

いたー!種類まで知ってる羊がいたー!

「羊さんー!コレ抜いて良いですか!?食べちゃっても平気ですか!?」

まだ食い意地張ってるよ。

「もしかしてミミ君知らないんですか?」

羊は不思議そうに首を傾げている。

「羊、こんな異常事態なのにラッキーって?」

さっきから騒いでいる悪魔を放置して羊に尋ねる。

「ヤドリダケって自分の余計なものを連れ去ってくれるキノコでして。なぜかその者が要らないって思ってる物だけピックアップしてくれるんです」

ほえー、なんかすごそう。

「羊さん!?つまり食べて良いんです!?」

「ダメです。自然と抜けるまで居なくなった後に幸運が来るので」

こっちにもそんな妖怪いたような気がするけど思い出せないなぁ。

「それ、いつから生えてます?」

「たぶん今日ですー。昨日頭洗った時にはなかった気がします」

悪魔が頭を振るたびにキノコも揺れる。

「……今日?そのサイズで?」

羊が引きつった笑いを浮かべているけど?

「ミミ君、ヤドリダケは10日間大きくなり続けます。何をしても取れません。そして、日に日に倍になっていきます」

羊の言葉を聞いているうちに体温が下がっていくのを感じた。

「ニンゲンさん、定規あります?」

羊の言葉に悪魔がメジャーを取り出す。何故持ってる。

「……3センチ。えっと10日だから約3メートルですね」

3メートルのキノコを頭に乗せる悪魔を想像して身震いが起きる。

「ミミ君、しばらく安静ですね7日目くらいから重いですよ」


ウチには悪魔がいる。

「首の骨折れません?」

心配するところがズレている悪魔が。

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