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悪魔がウチにおりまして・543

「その日、ニンゲンは忘れていたです。奴らに支配されていた怖さを」

「やめい」

「ニンゲン!?グーはアカンです、グーは!」

悪魔の後頭部にツッコミをめり込ませると、そんな泣き言を言ってくる悪魔。

それよりも版権ギリギリだった発言の罰にしたら軽いでしょ。

「ボクを殴るのは置いておきましょう。ニンゲン、なにか忘れていることを思い出しましたか」

悪魔はじっとこちらを見つめてくる。

思い当たることは、無い。

「わかってるなら教えてよ」

めんどくさい、という言葉を飲み込むくらいの社会性は、ある。

悪魔はわざとらしくため息を吐く。

「そこまで言うのならー。またご飯炊き忘れてます」

……そんなバカな。

炊飯器の蓋を開けるとひたひたに浸かった米。

「悪魔ー、出前のチラシあるー?」

「その前にボクに謝るです」

「ごめんね、ご飯炊き忘れて」

「そっちじゃないですー」

悪魔、私の脚にローキックをかましてくる。まぁ、痛くないからじゃれてるだけなんだけど。

「ニンゲン殿、ご飯無いのですか……せっかく大ぶりの明太子を買って来たのですが……」

奥の部屋から出てきた狐が耳と尻尾を垂らしてしょんぼりしている。

「ごめんね、明太子今度にしよ?」

「明太かまたま……」

狐、それはうどんだ。

「ごんちゃん、うどんならありますよ。ライド9号のお店に出すの分けるです」

あのザリガニバー、しっかり居酒屋に鞍替えして、料理の才能を発揮しているらしい。

「それならザリさんには連絡入れておきます。1人前分請求かけないように、と」

狐はスマホを取り出して連絡しようとするのを悪魔が止めた。

「ごんちゃん、いっそお店行きません?ニンゲンの奢りで」

なんでよ!?

「ニンゲン、ボクらが失敗するとすぐ殴るのにボクらはニンゲンをいつも許してます。不公平です。今日は反省するです」

「そうですね。ここで甘やかちたら今後も直りません」

まさかの狐が裏切った!?

「おや?ニンゲンさんの奢りですか?やぁりぃ」

ここぞとばかりに牛が微笑みかけてくる。この牛め!

「お店はザリさんもお店ですよ。高いところはだめです。ミミ殿、食べていいのは5品までです」

狐がフォローにならないフォローを入れる。5品は多いんだよ。

「えー、分かったですー。ニンゲン、反省するですよー」


その日はザリの店で晩ご飯。

次の日はご飯担当が悪魔だったのですが……。

「ニンゲン、出前のチラシをください」

狐ー、今日は悪魔の奢りだってー。

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