悪魔がウチにおりまして・542
ウチには悪魔がいる。
パソコンを前に頭を抱えている悪魔が。
「ニンゲン、えらいこっちゃです」
その表現、いつの時代のものよ。
「明日ケーキが100個来ます」
うん、えらいこっちゃですね!?
「ピース?」
「ホールです」
「正座、説明」
ウチの冷蔵庫、業務用じゃないんだから。
「えーっと……ケーキ、10個買おうとしました」
「それでも多いけどね」
「桁を間違えました」
何の擁護もしようがない清々しい誤発注だった。
「よくそんだけ買えるお金あったわね」
「実は悪魔界でニンゲン貨幣の大暴落が起きてます、ニンゲン安です」
ニンゲンを単位に使うんじゃありません。
「支払いはできるの?」
「前借りすればなんとか」
悪魔はうつむいて指折り数えている。結構ギリギリだったっぽい。
「ケーキのために前借りってキツイわね」
「ニンゲン、援助を」
「しません」
ここで甘やかすわけになりません。
悪魔、見事なまでに床に突っ伏してるけど譲ってはいけません。
「あれ、ミミ君どうしました?四つ脚の魅力に目覚めたのですか?」
二足歩行の羊が言っても説得力無いのよ。
「コイツ、間違えてケーキ100個買ったんだって」
悪魔は凹んでいて口も開かないので代わりに羊に告げると目を丸くしている。
「……ミミ君、そんなに食べれるんですか?」
問題はそこじゃない。
「食べるのは、できると思うのですが……」
食べれるの!?ケーキ100個を!?
「問題はお金、と。私も少し出しましょう。ミミ君、全部でいくらです?」
羊は財布を取り出して中身を確認している。こういうところ、羊って大人よね。
「45万です……」
「……3個くらい買いましょう」
前言撤回、と思ったけど100個だとそれくらいするのか。
「どんな豪華なの買ったのよ」
「ニンゲン、今はケーキ高いのです。普通のショートケーキです」
ひとつ4,500円、まぁそんなものなのか。
そう考えると羊も3つ買うと1万を越えるのか。
「ニンゲン……しばらくお家賃入れなくても良いですか……?」
「……今回だけだからね」
ウチには悪魔がいる。
方々に電話をかけている悪魔が。




