悪魔がウチにおりまして・541
ウチには悪魔がいる。
旅支度をしている悪魔が。
「ニンゲン!ボクは怪異ハンターになるのです!」
悪魔の前に鏡を出してあげる。
探しに行かなくても目の前にいるでしょう。
「ニンゲン、この鏡は何です?盾?」
防げるのは陽の光くらいでしょうよ。
「で、何の影響でそんなこと思いついたの?」
悪魔は目を輝かせる。
「メキシコには宇宙人がいるらしいのです!」
いません。
「古代文明の繁栄は、宇宙人のお陰らしいのです!」
違います。
「メキシコにはクリスタルドクロがあるそうです!」
映画かな?
「ミミ君、海外に行きたいのですか?」
どう納めようか考えているときに羊がひょっこり顔を出す。
ん?なんか怒ってない?
「羊さん!ボクは黄金のドクロを……」
「パスポート、誰が作るとお思いで?」
この羊、パスポートまで偽造してたの?
「羊さんには手間をかけてしまいます……でも!メキシコには太古のロマンが!」
「それ、ミミ君ですよ?」
『は?』
羊は呆れたようにため息を吐く。
「覚えてませんか。ミミ君昔遊びに行ったときに落としものしたじゃないですか。それが流れに流れてメキシコに」
大問題じゃない。
「あー、、、遠足の時のアレです?」
「そうそう。馬車に乗り遅れるって言って落としていったアレです」
「あの、なに忘れたの?」
聞くのがものすごく怖いけど、ここまで聞いてしまったらスルーしにくいものがある。
「アレです、アレ。乾電池」
乾電池!?
「それ落としたとき、大問題になったんですよー」
「アンタそこそこやらかしてるのね……」
羊はキッチンからマグカップを持ってふうふうしてる。
「幸い、当時のニンゲンにはよくわからなかったようで。ただそれ以来、こちらの世界に入る時、私物の持ち込みが厳しくなったのです」
その原因は未だに旅支度してるけど?
「ボク以外の落とし物があるかもしれません!ニンゲン、さぁ旅立ちましょう!」
旅立つ前に反省しろー?
そんな悪魔に羊は何かの紙を渡す。
「……高くないですか!?」
ウチには凹んでる悪魔がいる。
「今までのやらかしでパスポート作成に保険が入るそうです……」
私でもそうするわ。




