悪魔がウチにおりまして・537
ウチには悪魔がいる。
グミを積んでいる悪魔が。
「食べ物で遊ぶのやめなさいー」
悪魔の物だから強く言う必要は無いかもだけどさ。
「遊んでませんー、無気力に対する挑戦ですー」
変な言い訳をこねる悪魔にイラっとします。
寝転がりながらグミを積む様は無気力関係ないと思うんだけど。
「そんなこと言ってると、サバが来ますよ」
「ニンゲン、ボクは歩く魚類なんて知りません、知りたくもありません。それにコレは勘ですけどボクに関係なく来る気がします」
まぁ、そうなのよね。
なんなら今アンタの後ろ歩いて洗面台に向かったし。
どうやらこのサバ、ウチが気に入ったらしく毎日水浴びに来ている。
そのことは私も含めて全員スルー。
世の中には触れちゃいけないものがある、それは歩くサバだ。
そうは言っても別に蛇口は閉めていくし、2回目に滴ってフローリングびちゃびちゃなことを指摘したらタオルを持ってくるようになった。どうやって持ってるんだ。
そんな感じで私らに干渉しようとしないサバだけど、どうやらうぱとウマが合うらしい。ウマというか、水?
サバが来るとうぱは嬉しそうに飛んで行ってなんか話している風に見える。
サバはノーリアクションなんだけど、うぱが呼び止めると正座しているからちゃんと話を聞く気はあるのだろう。
正直、この歩くサバが何者なのかわからない。
そんなこと言ったらうぱもわからないから、余計な物生えているという理由で出禁にするのもなんか違う気がする。
うぱだって羽生えてるわけで。
「ニンゲン、怪奇現象を放っておくとろくなことにならないと思いますよ。ボクには見えないですけど何か来てるなら対処するべきです」
私からしたらウチにいる生き物、すべからく怪異なんだって。
どうやら悪魔、サバとは相性が悪いらしい。
「だいたいニンゲンはのほほんとし過ぎです。いきなり見たことも無いナマモノが歩いてるというの、に」
悪魔の言葉が止まった。
寝そべった悪魔の正面、今まさに話していたサバが立っていた。
悪口を言っていた本人に聞かれていた時の気まずさは悪魔も同じか。
ごくり、とノドを鳴らす悪魔。
相変わらず感情の読めない魚眼。
ていうかどこを見ているのかすらわからない。
「ニ、ニンゲン……」
その声は助けを求めるように震えていたが、どうやら目を逸らせないらしい。食べられないよ、体格的に。
サバはゴソゴソと揺れると、どこからかグミを取り出し悪魔の前に置く。そして何も言わずに去っていくのだった。
「……もしかして、いい魚です?」
「わからないわよ、なにも」
ウチには通いサバがいる。
「うぱちゃん、ごめんなさいです……」
悪口言ってた悪魔はうぱにめちゃくちゃ怒られてます。




