悪魔がウチにおりまして・535
道には悪魔がいる。
VSハチ、ふぁいっ!
事は3分前に遡る。
買い物に向かう最中に目の前にハチが飛んできました、以上。
「雑じゃないですか、ニンゲン」
「仕方ないじゃない、それ以上説明しようがないんだから」
自然の生き物、出会いは唐突です。
何が問題なのかと言うと、初手からあっちが臨戦態勢だってこと。
「悪魔、ハチにも嫌われるんだ?」
「失敬な!クモちゃんには好かれてます!」
この前みんなでお花見した時、なんのかんの仲良かったから好かれてるということに突っ込むことはない。
「虫から嫌われてるってことはないかー」
「ニンゲン、どうしましょう。回り道しますか?」
悪魔にしては冷静な判断。
まぁ、すでに横8の字飛行してるから逃げたくなるのはわかる。
「そうね、別に急いでるわけじゃ」
「あいたー!」
後ろを見ていたら悪魔の叫び声がこだまする。
悪魔の様子を見ると後頭部にしっかりハチが乗っかっている。
痛いと叫んでいる以上、しっかりと頭をぶっ刺されてます。
「ニンゲン、取ってー!」
悪魔が後頭部から近寄ってくる。
「来ないで!こっちも刺される!」
迫る悪魔の後頭部。逃げる私。
走りながらハチを見ると心なしか笑っているように見える。
コイツ、ムカつく!
「悪魔!そのまま真っすぐ!」
こんなバカにされて黙ってるわけにはいかない。
たまたま持っていた雑誌を丸め、ハチを迎え撃つ準備。
「ニンゲン!?嫌な予感しか!」
「問答!無用ー!」
後ろ走りしていた悪魔、ブレーキをかけた後頭部に向けてフルスイング!しなる雑誌!飛び立つハチ!いい音がする悪魔の後頭部!
「みきゅー!?ニンゲン!何するですー!!」
「悪魔!アイツ逃げた!」
鳴き声上げる悪魔を無視し、手の届かないところに飛んでいるハチ。
なんか嬉しそうに見えるのがムカつく。それより昆虫の感情読めてる自分にもムカつく!
「ちきしょー!ニンゲン、ライター持ってないですか!」
消防法に怒られそうなことをしようとしている悪魔。
気持ちはわかる、あのハチ、絶対楽しんでるし。
「あんちくしょー!!……あ」
ハチを見上げる悪魔が間抜けな声を上げる。
声に釣られて見上げるとハチに向かって一筋の黒い影。
油断しきったハチに突撃するは、都会の掃除鳥、カラス。
さっきまでハチが浮いていたところに一閃、そのままその場から消えてしまった。
「……ニンゲン、買い物行きましょう」
「そ、そうね」
道には悪魔がいる。
頭がぷっくり腫れている悪魔が。




