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悪魔がウチにおりまして・534

ウチには悪魔がいる。

朝からおにぎりにぎにぎしている悪魔が。


しかし、器用に握るものである。

悪魔の手はヒヅメで覆われているのでなかなか物を掴むのもクロウずるでしょうに。

「ニンゲン!お花見に行きましょう!」

なるほど、朝から張り切っていたのはそのためか。

「行くのは全然いいけど、場所とかどうしてるの?」

この時期のお花見なんて場所が残ってるとは思わないけど。

「大丈夫です、クモちゃんに場所取りをお願いしてますから!」

「本気で言ってる?」

場所取りということは他の人たちに見られるということ。

クモよ?巨大クモよ?

警察……いや自衛隊に通報されてもおかしくないわよ?

「大丈夫ですー、ほら早く行きましょう」

悪魔は一瞬で地雷子になって玄関から出ていくのであった。


公園はビニールシートを敷いた人たちでにぎわっていた。

「やっぱり混んでるわねぇ」

「ですねぇ、クモちゃんはどこでしょう」

……本当にクモを場所取りに出したの?

騒ぎになっていてもおかしくないんだけど……。

「あ、いたいた。クモちゃーん!」

地雷子は手を振ってとある場所にかけていく。

そこにいたのは、小学生くらいの男の子だった。

「……この子、ダレ?」

わかっていても聞かずにはいられない。

「ニンゲン、初めて見ますよね。クモちゃんです」

「ウソでしょ?」

悪魔に向かって両手を振るこの動きは確かにクモ。

「クモちゃん、いい場所ですー。言われた通り、明太子のおにぎりたくさん作ってきたですよー」

クモは嬉しそうにバンザイしている。

「……ヒト型なれたの?」

「なれるんですが、話せないのです。だからヒト型なりたくないんですって」

それを場所取りのために強いたアンタは本当の悪魔よ?

私が悪魔を見つめてるとクモは手を振って何かアピール。

「……みんなとこうして遊べるの、楽しみにしてたって言ってます。ニンゲン、ボクが無理矢理クモちゃんを使ったと思ってたです?」

そ、ソンナコトナイヨ?

「みんなって、これから他のも?」

「そうですよー。羊さんと神ちゃん、ごんちゃんに牛さんも」

本当にみんなだ。……ちょっと待て。

「そのメンツに声かけておいて、なんで私は当日なのよ」

私の質問に悪魔は悪びれることなく答える。

「だってニンゲン、ヒマそうですし」

お外で他人の目があったことに感謝するんだな!


みんなが合流してお花見が始まる。

「……花がないのに花見とはこれ如何に」

牛、黙りなさい。文句は気温に言って。

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