悪魔がウチにおりまして・531
ウチには……。
『ニンゲン……あなたの心に直接語り掛けています……』
まーた面倒なことを始めおって。
『ボクは全知全能悪魔……ニンゲンはボクの言うことを聞かなければなりません……』
そんなこと言うなら今日のご飯ブロッコリーの炊き込みご飯ですよ。
『それはちょっと嫌です。それならコーンが良いです』
食欲に支配されておって。
ところでそろそろ帰りたいんだけど?
『ダメです。ニンゲンはまだここにいてもらいます』
ふーん、ところで今何時?
『まだ7時半なのです……もっと惰眠を貪って堕落するのです』
今日休みだから別に構わないけど。
『やったー!……げふんげふん。ニンゲン、ボクの支配が深まっていて何よりです』
その言い方、なんかムカつくんだけど。
『気にしてはいけません。いつものことです』
確かに。
『そこをすんなり受け入れられるとボクの立つ瀬がないんですが』
そんなこと気にするならそろそろこの暗いのどうにかしてくれない。
『ダメです。ここは永遠の闇……具体的にはあと3時間くらい寝ててください』
……寝てるの?私。
『あっ……。寝てません、寝てません。アイマスクなんか付けてません』
……タネがバレてしまったのでいつの間にか付けられていたアイマスクを外す。
すると目の前にオレンジのパイプみたいなのが拡がっている。
「わっ!」
「みきゅ!?」
オレンジが遠ざかるとのけ反った悪魔が視界に入ってくる。
「ニンゲン、いけません。コレは音を集めるのです……」
随分とお手軽な直接話しかけだなー。
要するにメガホンを私にくっつけてぼそぼそ話しかけていたのでした。
「そのメガホン、どこで買って来たのよ」
「駅前で貰ったですー。なんかどこかのチームが負けたから投げ捨ててる人がいてもらいました」
リサイクル……いやリユースか。
「ちゃんとお礼は言ったの?」
「言いました!牛さんの店に連れて行ってうどんを奢りました!」
それは客引きというのでは?
その時ぴろんっとスマホから着信音。
「……ニンゲン、昨日の人から今度お茶に誘われたのですが」
「良いじゃない、言ってくれば?」
悪魔は眉間にシワを寄せている。
「……めったに会えない人とアポするから一緒に来るように言ってます」
「……アンタも変な人と連絡先交換したわねぇ」
ウチには一応悪魔がいる。
「行って、逆に毟るのありですか?」
やめて差し上げろ。




