悪魔がウチにおりまして・530
ウチにはプリンがある。
これ、誰が買って来たんだろ?
いつの間にか冷蔵庫に入っていたプリン。
普通の物なら疑問に思わなかったのだが、てっぺんにサクランボ、脇には生クリームとキウイやパインなどのフルーツが添えられている、要するに高いヤツ。それがなぜか人数分ある。
「悪魔、このプリン知ってる?」
「コレは百疋屋のプリン・アラモードですね」
そう言うことを聞いてない。そして桁が足りない。
「聞き方悪かった。誰が買って来たか知ってる?」
「え?ニンゲンが買ってくれたのではないですか?」
そんなお高いプリンなら買わないわよ。
「妙ですねえ。これは!事件の香りがします!」
「なに?推理物流行ってるの?」
昨日羊がやった謎解きといい、パイプを取り出した悪魔といいなんでこんな力入れてるの?
「初歩的なことなのです、ニンゲン。具体的には」
「はいはい、そのチョコパイポをしまってきなさい」
「あいー」
今日は素直。そりゃお高いプリンを前にじれったい会話なんかしたくないでしょう。
「とりあえず食べません?善は急げです」
「持ち主知らずのお菓子を食べるのは善?」
それすなわち盗み食いなり。
「大丈夫です、人数分あるということは……ニンゲン、ちょっと待つです。人数とはどこまでのお話ですか?」
プリンの数は7個。
「明らかにうぱちゃんの分はありませんね」
えーっと?私、悪魔、クモ、狐、羊、牛……うぱじゃない?
「ボクです」
クローゼットからモグラが出てくる。
「ぽんちゃん!こんなにたくさんの百疋屋のプリンを……」
「百疋屋?なんのことです?」
モグラは首を傾げて腕を組む。
「え?わざわざ買ってきてくれたのでは?」
「なんでボクがそんな遠いところに。コレ、ボクが作ったんです。正確にはボクの会社ですけど」
忘れてた、このモグラ多企業オーナーだった。
「こんな豪華なプリンをなんで?」
「ほらたくさん毒……味見をしてもらったほうが良いじゃないですか」
絶対毒味って言いかけた。
「前もって言ってくれればぽんちゃんの工場に行きましたのに!」
「だからです。ミミちゃんは以前マカロンを食べすぎたことがあります。廃棄なら食べて良いと言ったのに、商品まで……」
悪魔、謝り……じゃなくて弁償しなさい。
「今回のプリンは食べていいのですよね!?」
「ええ。でも、ひとつだけチャレンジプリンがあるので」
なんでそんな物作ってるんだか。
ウチにはプリンが並ぶ。
大当たりを引いた羊はその場でぶっ倒れました。




