悪魔がウチにおりまして・51
ウチには悪魔が居る。
外に出るときには地雷系女子に変わる悪魔が。
「ニンゲン、今日の晩御飯は何にするのですか?」
ふたりでスーパーに訪れ、ショッピングカートを押していると納豆に手を伸ばしながら悪魔が尋ねてきた。
「きりたんぽでいいかな」
カゴに入れた納豆を戻しながら、加工食品売り場に進んでいく。
「きりたんぽ…なまはげのおじさんがそれに切られた傷を見せてくれたことが…」
おーい、騙されてるぞー。
きりたんぽ、鍋つゆ、鶏だんご、白菜。
ねぎはこの前の余りでいいとして…。
適当に食材を見繕っているとうぱがふわふわと漂っている。
こっち!こっち!とお菓子コーナーの看板を指さして連れていこうとする。
「ニンゲン、お菓子が欲しいのですか?仕方ないですね、お付き合いしましょう」
じっとお菓子の看板を眺めていたら悪魔にため息交じりに言われてしまう。
おい、よだれ垂れてるぞ。
「お菓子は家にあるもの先に食べなさい」
「なんでー」
一瞬で目から光を失う悪魔。
うぱは私の袖にしがみついて、指を1本立ててくいくいと引っ張る。
ここで甘やかしてはなりません。
「うぱもガマン。ほら会計行くよ」
「ならば!うぱちゃんと1個ならいかがでしょう!」
その言葉に悪魔に抱き着きながら上目遣いで見上げてくる。
自分の欲に対して浅知恵を働かせても、所詮は小童よ。
「あんた、うぱ見えてないでしょ?いやだよ、私通訳するの」
私もジェスチャーしか見えないから明確に話せないし。
「ニンゲンの力を借りなければいいのですね?」
「いいよ、そのかわりふたりで1個。喧嘩しない。それができるなら買ってあげる」
うぱは両手を上げて飛び跳ねている。
「言いましたね。うぱちゃん!今こそ力を合わせるのです!」
悪魔、そっちに居ない。
そして大声出さない、恥ずかしい。
「うぱちゃん、ボクがゆっくり歩くから、欲しいお菓子を落とすのです!ボクが気に入ればそれをニンゲンに…」
「お店に失礼だから却下です」
落とした物を商品棚に戻すわけにはいかないでしょう。
うぱも手をポンと叩いて納得する。
少し腕を組んで、うぱが棚に近付き商品名の書かれたプレートをかたかた揺らす。
悪魔がそれを見て棚の端に戻るとゆっくりと歩き出した。
やられたなぁ。
ウチらは帰路に居る。
イチゴチョコを嬉しそうに抱える悪魔と、踊りながら悪魔の周りを飛ぶうぱと歩きながら。
 




