悪魔がウチにおりまして・527
ウチには悪魔がいる。
あまり清潔とは言えない悪魔が。
「ニンゲン、おはようですー」
今日は休日、悪魔はのんびりと9時まで寝ていた。
寝癖で毛並みの秩序はおサラバいしている。
「もう9時よ?」
「まだ9時でしたかー。もうひと眠りしてこようかなぁ」
いくら休みでも寝過ぎです。
「せっかくいい天気なんだから、布団干しましょ」
もう1度眠りに行く悪魔を止める。
コイツが布団を干すところをひさしく見ていない気がしたのだ。
「えー、今度で良いですよー。ボク、眠いですー」
「クモにハンモック作ってもらいなさい」
言われた通りにクモにハンモックせがみ始めてるんだけど、悪魔ってこんなに冗談通じなかったかしら?
悪魔の部屋に入り、布団を持ち上げる。
整えるためひと振るいすると中からイモ虫がころりんしてきた。
「入ってます、ノックくらいしてほしいもんですなぁ」
「悪魔ー、フライパン温めてー」
「くれいじぃ?カリっと炒めて食べるおつもり!?」
そんなわけないでしょう、お腹壊すわ。
「温めたフライパンをアンタに叩きつけるだけだから」
「なにそれ、ダイレクト暴力?殺傷力高くない?」
それをしてもケガひとつしなそうなんだよな、この虫。
「ちゃんと悪魔に断ったの?産卵とかしてない?」
コイツの子孫が増えられても面倒なのよね。
「無論!無許可!……ところでニンゲンさん、ボクの事なんだと思ってます?卵で増えるタイプなわけなくなくない?」
「ニンゲンー、フライパン洗ってないですよー?……あれ?ボクの部屋で何してたです?羽化?」
悪魔、油にまみれたフライパンを持ってくる。
サナギにもなってないコレがどうやって羽化するのだろう。
「悪魔、コイツ布団の中にいた」
「ニンゲンー、フライパン魔法剣で済ますわけにいかないですー。ホルマリンくらいやらないとー」
声色変わってないけど、悪魔ブチ切れじゃないの。
「標本ダメ!絶対!世界にひとつだけのイモ虫なんだから大切にして!」
なら、なおのこと希少種として保存しないと。
「で?なんでボクの布団の中に?理由次第で許してあげるです」
会話の余地を残すなんて、悪魔はおおらかだなぁ。
「じ、実は……病気の妹が寒いと……イモ虫、感覚が繋がっているのでボクが温まると妹も安心して眠れるんです」
どこからかハンカチを取り出して涙を拭う。
「……そ、そんなこと言ってくれて無かったです……イモ虫さん、温まるです、妹さんが早く良くなるように……」
悪魔ー、釣られて泣いてるけどさ。
「さっき、コイツ世界に1匹だけだった言ってたよ」
「……ニンゲンさん、しー!」
ウチにはイモ虫がいる。
「ニンゲン、イモ虫の煮つけって美味しいですかね?」
私食べないよー?




