悪魔がウチにおりまして・524
ウチーには、あくーまがおりまーして。
……よし、今回は夢オチ回ね。
「悪魔、起きて」
「ニンゲン、こう物語の構成と言いますか」
聡明なる読者諸君には読みやすいように整えているが、会話はすべて冒頭のように間延びしている、と伝えておこう。
「ニンゲン、思考が随分と回りくどいようですが」
「そんなことは無いよ、悪魔。私の口調は至って普通さ」
悪魔は目を細めている。
どうやら私の言葉をいぶかしんでいるようだ。やれやれ。
「ニンゲン、ここで考えましょう。今回どちらが夢を見ているのか、という点です」
悪魔というものはどうやら他者を陥れるためにあるらしい。
私が夢オチ?そんなことするわけがないだろう。
「ニンゲン?1度世紀末な夢を見てボクをモヒカンにしたの忘れてます?」
「そんなことより悪魔よ。今回の犯人……いや、この場合は夢追い人とでも言おうか。その夢追い人を見つけ出すのが使命というわけさ」
「どうでも良いんですけど。今回はその話し方で押し切るです?ボク、背中がむずがゆくて」
悪魔はどこからか孫の手を持ってきて背中の毛並みを整える。
これだから粋というものを理解しない動物は。
「なんかすっごく差別的なことを思われていたように感じます。いいです、ボクは普通でいきますのでー」
「そんなことよりこの灰色の密室、どうやって抜け出そうか」
「壁はパステルピンクですが」
このどうにも落ち着かない壁紙はどうにかならないものか。
「四方を壁で囲まれている。扉も窓もない、いわゆる密室だ。はたして……」
「ニンゲン、出るところがないのにボクたちどうやって入ったです?」
……たまには良いことを言うじゃないか。
「その謎を解けば、ここから脱出することも容易ということか」
「ニンゲン的にはここ夢なのでしょう?それならどんな理不尽があっても不思議じゃないのでは」
……ジーザス・クライスト!
「なんということだ、それでは抜け出すなど不可能ではないか」
「ニンゲン、そんな簡単に諦めるですか。どんなこんなんでも乗り越えるのが名探偵ではないのですか!」
悪魔は私をまっすぐ見据えている。
「……そうだったな、こんなことで諦めていては名が廃るというもの!」
さぁ、この程度の謎、簡単に乗り越えようじゃないか!
『ていうゆめをみた』
「クモ、疲れてる?」
「絵、上手でしたねー」
ウチにはクモがいる。
クモって夢見るんだね。




