悪魔がウチにおりまして・521
悪魔がウチにおりまして・521
ウチには悪魔がいる。
さっきからそわそわしている悪魔が。
「ニンゲン!映画に行きましょう!」
「行かない」
この会話、3秒。
ウチには悪魔が……「だー!終わらせるんじゃないですー!」
「なによー、悪魔と映画に行った、楽しめたって話、前もやったじゃない」
その時観た映画、なんだっけ?悪魔VS怪獣だったかしら?
「ニンゲン?いくら想像上とはいえボクらが怪獣と戦うって無理じゃないです?」
悪魔の意見も最もだが、宇宙外生命とバトってた生き物が泣き言言うんじゃありません。
「で、なにを観に行きたいわけ?」
速攻で断っておいてなんだけど、興味のある奴なら別について行って構わないわけで。
「ニンゲンー!洞穴さんの『妙なハウス』です!」
……作者、あとで体育館裏に来なさい、言いたいことあるから。
「とあるヒトが住んでるお家が、入るたびに構造が変わるというお部屋改築系ミステリーです!」
それは妙を通り越してレベル1に戻るダンジョンなんよ。
「……行かない」
少し考えた結果、ちょっと厄ネタっぽいので却下です。
「どうしてー。ニンゲンー、ケチー、ポップコーン奢るですから」
大の大人がポップコーンに釣られて映画には行かないんです。
「ほう、妙なハウスですか……この家の話ですか?」
なんか失礼なことを言いながら羊がクローゼットから出てきた。
「妙ってどこがよ」
「……ニンゲンさん、メーター越えたクモだけに飽き足らず、カイコまで生息している家は妙を通り越して怪奇なんですよ」
ぐぅ!言い返せない!
「羊さんー!妙なハウス、行きましょー!」
「ミミ君、アレ、出るって噂、聞いてませんか?」
大丈夫?風評被害、大丈夫!?
「アレは2週間前、レイトショーを上映しているとたまたまお客さんがひとりしかおらず……上映が終わるとなぜかそのお客さんは消えていて座っていたはずの席がじっとりと濡れて……」
「羊さん、公開昨日です」
100%デマじゃないの。
「…………」
何か言い訳があるなら聞くけど?
「ミミ君!私がついて行くのでポップコーンいただけますか!」
押し切れると思うな!?
「えー、羊さん映画の最中寝ちゃうんですものー。ニンゲンは何のかんの最後まで観ます。感想言い合えるのが良いんです」
寝るのか、このもこもこは。
「ごめんね、本当に忙しかったりするから。狐ちゃん誘えば?」
悪魔は目を細めた。
「ごんちゃん、実はホラーダメなんです……」
ウチから悪魔が出かけた。
ちょっとしょんぼりと出かける悪魔が。




