悪魔がウチにおりまして・520
ウチには悪魔がいる。
カイコを座椅子にしている悪魔が。
こいつ、怖いものなしなのか。
昨日あれだけイモ虫を……あれ?考えたら触覚で叩いていただけだからそんなに変なことしてないかも?
「ニンゲンー……この子はダメです、アカンです。生き物をダメにするもふもふ加減です……」
言うけど、虫よ?
カイコってそんなに毛あったっけ?
しかし悪魔はゆったりと腰を掛けてだらだらーっとくつろいでいる。
当のカイコ、無表情である。
「モス、嫌じゃない?」
一応声をかけてみるが、複眼の目から感情を読み取るっていうことは無理でしょうよ。
「大丈夫ですー……モスちゃんは嫌なら蹴り飛ばすですー……」
……私が寝た後ドタバタしてたのってモスに蹴り飛ばされてたの?
「悪魔、この子と話せるの?」
とにかくこの子は反応が薄い。
正直、どうしたら接したらいいのかわからない。
こっちの言葉を理解しているのかすら、何も。
「話せるわけないじゃないですかー……何度も痛い目にあって、塩梅を探ったのですー……」
顔が、溶けてる。
その努力、どこか間違ってない?
「モス殿は諦めたのです。昨日まで壁に張り付いていたのにミミ殿が呼んだら嫌そうに降りてくる次第でちて」
狐がマグカップを傾けながら目を細める。
「ごんちゃんは、ダメですー……昨日散々ボクの事バカに……あいたっ!」
狐にイジワルを言った瞬間、モスは悪魔を蹴り飛ばした。
「モスちゃん!ボクとの蜜月は遊びだったですか!」
誤解を生みそうなことを言うんじゃない。
悪魔の言葉を無視して、そのまま壁に戻っていく。
「……どうやら、飽きたようですね、モス殿」
飽きたからって蹴飛ばす!?
「アンタ、そんな危ない座椅子に座ってたの?」
生きてるのを座椅子扱いしたら怒りそうだけど、飛んできたらホウキを取りに行けばいい……勝てる気はしないけど。
「それでも!守りたいもふもふがあるのです!」
お前のじゃないよー、生きてるよー。
「言っても聞かないのです。よほど気に入ったのでしょう」
狐、ふぅとため息。
耳がぴくぴく動いてるから自分も座りたいんだろうねぇ。
「モス、蹴るの禁止。危ない」
言葉に反応してじっとこっちを見る。
心なしか触覚が垂れている。……しょんぼりしてる?
「避けていいから」
ぴこんっと触覚が跳ねた。やっぱり嫌だったんだろうなぁ。
ウチにはモスがいる。
「モスちゃん、かむばーっく!」
あー、気にしなくていいよー?




