悪魔がウチにおりまして・517
ウチにはイモ虫がいる。
ラジオ体操をしているイモ虫が。
おもむろに冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してイモ虫にかける。
「冷たっ!ボク汚れてない!」
やっぱり消えないか。
悪魔系は聖水で浄化できると思ったのだが。
「1!ミネラルウォーターは聖水じゃない!2!ボクは悪魔じゃない!3!どんぶらこって桃でしか使わなくない?」
最後取って付けたようなこと言ってるし。
「なんでもいいけど。濡らしたら拭いておきなさいね」
「はーい……理不尽!?」
気付かれたか。
「え?ボク踊ってただけで掃除させられるの?まさに!濡れ衣!」
やかましいわ。
ちょっと上手いのやめなさい。
「それ、踊りじゃない。健康体操。そっちにも無いの?多足体操とか」
「さーべーつー。イモ虫さーべーつー。考えてください?ボクみたく愛くるしく話すイモ虫がいると思いますぅ?」
少なくとも愛くるしいイモ虫は見たこと無いけど?
「ぐりぷたん!」
「今度はどこの国の言葉?」
「テキ!トー!」
「殺虫剤どこかしら」
考えたらコヤツに付き合う必要なかった。
「虐待ダメー。ボク人畜魔無害ー」
なんか1個変なの混ざってた気がするけど?
「いいですかー、ニンゲンー。ボクは可愛くて無敵のイモ虫ですー」
なんで悪魔の声真似までしてイモ虫名乗ってるの?
「ほら、いろんな声で刷り込んでいこうと思いまして。メノー、イモ虫可愛いわよー」
お姉の声真似まで!?
「アンタの声帯どうなってんのよ」
「ニンゲン……いつから虫に声帯が付いていると錯覚していた?」
今の声、なに!?
「ふふふ……あまり驚くなよ、弱くむぎゅう」
怒られるから!その声は怒られるからー!!
慌ててイモ虫を踏みつぶす。
「おーもーいー。普通のイモ虫なら即死の体重……計測!ごじゅう……」
「だー!!!」
口を踏んで言葉を遮る。誰が見てるかわからない状態で体重を暴露するんじゃない!
「ニンゲンー、ただいまですー……何してるです?」
「何してるんでしょうねぃ?」
たい焼きを持って帰ってきた悪魔の隣にイモ虫が……イモ虫!?
「ボクの能力は、さいみ……」
「悪魔、捨てて!」
ウチにはミノ虫がいる。
す巻きにされて口にガムテープを張られたイモ虫が。




