悪魔がウチにおりまして・516
ウチには悪魔がいる。
ポップコーンをつまみながらカチカチしている悪魔が。
この「つまむ」という言葉が食べるという意味ではなく、実際にひとつひとつつまみ取って、ふたつの皿に寄り分けていることを差すとは思うまい。
「なにしてるの?」
ふたつの皿には塩とキャラメルポップコーンが並んでいる。
そして悪魔はポップコーンを移動させるたびにカチカチを押していた。
「数取器と言うらちいです、コレ」
腕を組みながら悪魔の様子を眺めていた狐が全く実の無い情報をくれた。
聞きたいのはそこじゃない。
「で、悪魔はなにしてるの?」
「ニンゲン!じゃましないで欲しいのです!ボクは今真剣なの……あー!」
おっとー!手が滑りましたー!
具体的には皿をごちゃまぜにしてカウンターをリセットしましたー!
「ニンゲン殿、引くわー」
狐が可哀そうなものを見る目を!?
「あぁあぁ!全部やり直しじゃないですかー!ニンゲン!お前がやるですー!」
悪魔、荒ぶる。
「ごめんて。で、なにしてるの?」
いい加減答えなさい。手伝うから。
「実はミミ殿とケンカちまして。このポップコーン、塩とキャラメルどっちが多いの数をかぞえ……ニンゲン殿が逆に引いてません?」
そりゃ引くでしょ、どっちでも良いわ、そんなん。
「ちなみに、どっちがどっち?」
「ボクが塩ですー!」
「キャラメルの方がいつも余るのです」
「……この袋は、の話になるけどそれはいいの?」
2匹、同時に頷く。
「それも天命」
「どうせ、確実に同じ数なんて入れられないの知ってますー」
左様ですかー。
「ちなみにどっちがどっち好きなの?」
「某は塩が」
「甘いものは至高なのですー!」
……原因、分かったようなものなんですが。
「気の済むまでやんなさい」
呆れて物も言え……ぐふっ!?
なんか襟元引っ張られた!?
「ニンゲン、なに帰ろうとしてるです?」
「その通り。自らの罪は償うべきです」
2匹は、じりじりとにじり寄るのだった。
ポップコーンを仕分ける私がいる。
不用意な行動はしてはいけませんね。




