悪魔がウチにおりまして・514
ウチには悪魔がいる。
どてらに包まっている悪魔が。
……そんなもの、ウチにあったのか。
「ニンゲン!3月です、3月のはずです!」
「そうね」
悲痛な叫びをあげている。
その理由はどてらと外の天気でなんとなくわかっている。
「3月は!春のはずです!なぜ!雪ですか!」
「ゴメン、私も聞きたい」
令和になってからというもの、気温の乱高下が続いている。
正直、私も勘弁してもらいたい。
「寒いよね、今日」
「おか!しい!もう衣替えしてダウンはクリーニングしちゃいましたのに!ダウン、かむばっく!」
ちょっと待って?アンタ、ダウンなんか持ってたの?
「ただいま戻りまちた」
雪の降りしきる中、狐は耳当てにニット帽という完全防寒で買い物から帰ってきた。
「ミミ殿、ピザまん売り切れてまちたので、代わりに極上角煮まんでいいですね?」
まったく近くないまんじゅう買ってきてるし。
「なんでもいいのですー!それよりもココアは!熱々のココア!」
……粉あるんだから自分で沸かせばいいのに。
「ココアも売り切れでちた」
「なーんーでー!寒いのにー!」
「寒いからじゃない?」
考えることはみんな同じってね。
「かくなる上はニンゲン!今夜のご飯をお鍋に」
「残念、今日はお刺身です」
とてもいいスズキとイカを貰ったので仕方ない。
「刺身……刺身!?こんなに寒いのに!?」
タイミングが悪いのは認める。
「仕方ないでしょー。せっかく生でもらったんだから」
「某、白身魚、好きです」
狐はいい子ねー。しっぽぱたぱたしてるから、本当に好きなんだろうな。
「悪魔が温かい物食べたいならカレーがあるわよ、レトルトの」
「せっしょう!がってむ!じぇのさいど!」
最後、私に恨みを言ってないか?
「ミミ殿、そんなにカレーが食べたいなら某が代わりにミミ殿の分はいただきましょう」
よだれを垂らしてるぞー、少しは取り繕いなさい。
「裏切者ー!ボクも!お刺身!好きっちゃねん!」
情緒乱れすぎて口調変わってるじゃないの。
「……あ、別に温かくできるか」
『なんですと!?』
ウチでは悪魔が泣いている。
「ニンゲン、一生ついて行きますー……」
「たぶん私の方が先に死ぬよね?」
泣きながらだし茶漬けを食べている悪魔が。




