悪魔がウチにおりまして・512
ウチには悪魔がいる。
お風呂に向かった悪魔が。
あ、戻ってきた。
「ニンゲン、お風呂が大変です。泥……土まみれです」
「えー?ちゃんと洗ったよー?」
悪魔に手を引かれて風呂場に行くと、言われた通り中がどろっどろの土まみれ。
「ウソでしょ?いくら何でもこんなに汚れるなんて……」
「お風呂の中になにか入ってるですー。怖いからニンゲンが取ってください」
言われた通り悪魔を掴んで湯船に放り込む。
「みゃー!?溶ける!溶け……無いです。底になにかあります」
溶けるわけないでしょう、お湯だよ?
悪魔は手を突っ込みごそごそと取り出した。
「イモだわ」
「イモですね」
正確にはジャガイモ。品種はわからない。
「こんなの入れるのは、ヤツか」
「ですね」
悪魔と頷き合う。
「出て来るです!ぽんちゃん!」
「呼びましたか」
排水溝からモグラが出てきた。
「……どうやって入ってたです?」
「企業秘密です。それでボクに何の用です?」
あー、ツッコミ要件が多い!
「コラ、もぐら。みんなが入るお風呂にイモ入れたでしょ」
「まさにイモを洗うよう……」
洗うな、衛生面アウトだろ。
「これは来週蒔く種イモ……食べないものなのでだいじょ……ミミちゃん?」
「コレ、埋める用でしたかー!」
お口が頬袋してる悪魔。コイツに対しては何も言うことはあるまい。
「……ミミちゃん、種イモ相場で請求書作りますね」
「それを言ったら風呂の使用料取るですー!」
それを出せるのは私なんだよ。
「とりあえず、イモ引き上げて。綺麗にして」
「ここまで運ぶの大変だったのにぃ」
にぃ、じゃないんだよ。
「ちなみにどれくらいですか?30キロくらい?」
「30トンですね」
なんで入ってるんだよ!?
「我がもぐもぐわんぱにーにとって不可能は無いのです。具体的には異次元に繋がってます」
それ!ウチである意味!……ちょっと待て。つまりとっても大きな浴槽ってことよね?
「……モグ、さすがに水道代払ってね?」
「みゅう!?」
ウチにはモグラがいる。
念書を書かされているモグラが。




