悪魔がウチにおりまして・505
ウチには悪魔がいる。
上半身が床にめり込んでいる悪魔が。
この状況は「床にめり込んだ悪魔」としか表現できない。
だって悪魔の下半身が犬神よろしく床から生えているのだから。
「悪魔、なにやってんの?」
声による反応は、無い。脚をぴこぴこと振っているので聞こえているようだ。
「これ、誰か知ってる子いる?」
こんな状況になるなんてそれ相応のことが無ければ起きないと思いたい。
だけどクモもうぱも首を振った。
「いきなり生えてきたんですよ、ミミ君」
テーブルでずんだもちを食べている羊が口の周りを緑に染めている。
「いきなり?そんなことある?」
いくらこの子が妙ちくりんだとしても何もないところから生えてくるなんてありえないでしょうよ。
「おや、お待ちを。ミミ君、脚だけ忘れてどうしました?」
羊が震えた角を外して話し始める。
どうやら悪魔からの電話のようである。
「え?身体はあっち?どうなってるんですかー?」
羊、笑ってるけどシャレになって無くない?
「え?悪魔の身体あっちなの?」
「替わります?」
羊の角を渡されるとそのまま悪魔の声が聞こえてきた。
『羊さん、引っこ抜いてください!』
電話が替わったことに気付かない悪魔。
「あの脚引っ張ればいいの?」
『ニンゲン!?どうしてここに!?』
それはこっちのセリフだよ。
「アンタねー、なんで脚だけこっちにあるのよ」
『こっちって!?もしかしてボクの脚、ウチにあるです!?』
なんで本人が気付いてないんだよ。
「ミミ君、引っ張って良いのですか?」
『ダメです!その距離だともげちゃいます!』
遠いともげるんだ。結構グロい状況なのか。
『助けて欲しいのですー』
角口で泣いている悪魔。助けようにも何をすればいいのやら。
「ミミ君。ぶっちゃけの話、右のレバーを下ろして、そのあとに3350って入力してください」
羊が謎のコマンドを悪魔に伝える。
『さんさんごーぜろ……戻った!?戻ったですー!!』
あ、悪魔の脚、消えたわ。
「……アンタ、知っていたのね?」
「以前私は首だけになりましてね……」
……それは、大変だったでしょう。
「あの時戻し方を知れなかったら私は今頃……」
生首な羊を想像する。
「気兼ねなく食料?」
「慈悲の心!」
ウチには悪魔が帰ってきた。
「この毛……生えてきますかね……」
お腹にボーダー刈り込みの入った悪魔が。




