悪魔がウチにおりまして・500
ウチには悪魔がいる。
部屋の真ん中で座禅を組んでいる悪魔が。
目を閉じてでーんと座っていて邪魔ではあるが、どかす理由も無いからそのまま放っておく。
あの短い足でどうやって組んでいるのかは七不思議のひとつにカウントしてもいいかもしれない。
「ふふふ、目を開けるまでもありません。クモちゃんでしょう、丸わかりです」
私だよ、節穴以前だわ。
クモが驚いてこっちを見てるし。アンタは悪くないよー。
あの、後ろにこっそり近付いてくる狐に反応はないの?
「ニンゲン、後ろにいるですね?みんな、気配の消し方くらいちゃんと……あいたっ!」
狐は背後にピッタリとくっついて5秒ほど待ってからチョップを繰り出した。
「ミミ殿、甘い甘すぎます。まるでサルミアッキのように甘いです」
チョイス!!
それ甘くないヤツ!
「あれ、ごんちゃん?ニンゲン!後ろにいたはずでは!」
何ひとつ当たって無いんだよなぁ。
「悪魔、無理だから。目を使いなさい」
なんか奥義伝授みたいなこと言ってしまって恥ずかしい限り。
「そんなこと無いのです!目を閉じたまま鍋のフタで手裏剣くらい防げるのです!」
あー、これは時代劇を見たなぁ。
「ミミ殿、まず大切なことが。忍びは、いません」
悪魔はその言葉に耳を塞いでいる。
「侍も、大名もいません」
「いるもん、侍見たもん!テレビの中で!」
ですよねー、テレビの中だよねー。
「絶滅ちたのです。ちなみに、湯屋に行くと?」
「砂金のおおつぶ!カエルの声!」
「お客さまとて許ちません砲もありません」
悪魔、号泣。
「苦団子ー、苦団子ー」
それは要らないでしょう。
「ミミ殿、目を背けてはいけません。無くなったものを懐かしんでも戻ってはこないのです」
狐、さらりと神さまのお風呂屋さんあるていで話してるのは問題だよ?
「ごんちゃん、ボク悔しいです。侍で寿司芸者したかったです!」
欲まみれだなぁ……クモ、ココア飲むー?
「ミミ殿、芸者道は厳ちいですよ。それでも挑むのですか?」
「ごんちゃん、ボクは諦めないのです!」
狐、悪魔の肩に手を乗せる。
「ミミ殿、まずは体力を付けましょう。走るのです!」
「わかったのですー!走ってくるのです!」
悪魔は狐に言われて玄関から飛び出して行った。
ウチには狐が残る。
「ふぅ、やっとどいてくれまちた」
……策士よのう。




