悪魔がウチにおりまして・491
ウチにはモグラがいる。
大量の段ボールを運び込んでいるモグラが。
「いつもお世話になってます、もぐもぐカンパニーです」
運びながら片手間で言うんじゃないの。
「コレ、なに?」
「チョコレートです。ミミちゃんから頼まれました」
10箱を越える段ボールが、全部チョコだっていうの?
「こんな大量の……あれ、アンタのところ前は豆じゃなかった?」
確か、カカオ豆ダイレクトに送ってきたことがあった気がする。
「ミミちゃん、カカオそのままでしか食べられなかったんですって」
作るの面倒そうだもんなぁ、チョコレート。
「今年はこんなものを持ってきました」
モグラは段ボールの封を切る。
いいのか、運搬者。
「良いのです。まだお金を貰ってません。だからボクの物です」
なかなかな暴論を飛ばしてきている気がするが、突っ込むことは避けましょう。
どうせ私の物じゃないし。
中から出てきたのは……箱?
段ボールにみっちり入った茶色い物体が薄いビニールに包まれて……まさか。
「それ、チョコ?」
「そう、純度100%のチョコです」
デカくない?
「中が空洞とかじゃないのよね」
「そんな詐欺まがいなことはしません。みっちりチョコです」
モグラは再び中身を戻してガムテープを張り直す。
結局それを渡すんかい。
「重かったでしょ」
「普段はもっと重い物運んでます。100キロまでなら余裕です」
忘れていた、コイツも悪魔族。こっちの感覚とは違うんだった。
「ふぅ、これで全部っと」
全ての箱を運び終えたのか、モグラはキッチンに向かってヤカンを火にかける。
さらりとウチで休憩しようとするんじゃないよ。
「ニンゲンさん、コーヒー飲みます?」
それはウチの粉じゃ。
「アンタがチョコくれるならねー」
「……仕方ない。これは秘密なのですが」
モグラはもぞもぞとどこからかチョコを取り出す。
どこから出した。
「これは試作品なのでこれだけしかありません」
「中身、何?」
「パイナップルをチョコでコーティングしました。育てるときに酸味強めになるようにして、チョコと合うようになってます」
コイツ、何でもありだな。
「せっかくだからいただきましょう」
モグラとふたりでパインチョコを口に放り込む。
『すっぱ……!?』
ウチにはモグラがいる。
コーヒーでうがいをしているモグラが。




