悪魔がウチにおりまして・488
ウチには狐がいる。
渋い顔をした狐が。
「ごんちゃんさん、ごんちゃんさん、おいでください」
その理由はこの一言でわかっただろう。
あーからんーまで書かれた紙の上に乗せた五円玉。
悪魔とクモ、そしてイモ虫がその五円玉に触れている。
クモ、めっちゃ嫌そう。イモ虫、乗ってる。
そして目の前で狐の顔がチベットへ飛び立っている。
「悪魔、それってこっくり……」
「ニンゲン!いけません!これは生半可な覚悟で近付いてはいけない妖術なのですー!」
ならやるな、人んちで。
「狐ちゃん、これは狐ちゃん的にOK?」
「ダメです」
ですよねー。
「ですけど、ミミ殿言っても聞きません」
諦められてるー。
「なぁにを言ってるんでるんですか!これは古き良き降霊術!ヒトの身に余るこの力!それと引き換えの悲劇!コレは興奮せずにいられますかー!」
イモ虫、大興奮。牛乳を霧吹き。
「だからアブラムシじゃないんですけど」
大丈夫、知ってるから。
どこからかハンカチを取り出して顔を拭いているイモ虫。
「というわけでレッツラゴー!ごんちゃんさん、ごんちゃんさんお入りください」
すすすっと鳥居から五円玉が入る。
「動いたですー!クモちゃん力入れてるです!?」
本気で嫌そうに首を振るクモ。
良く付き合ってます、あとでカニカマあげましょう。
「そ、それじゃ……今日の晩ご飯は何ですか!」
……それを聞くことかなぁ?
五円玉が動く。
ゆっくりと「さ」「か」「な」と動いた。
「ニンゲン!今日の晩ご飯は魚!でしょう」
「違うわよ」
ゴメン、麻婆豆腐とギョウザ。
「そ、そんな……ごんちゃんさん!しっかりするです!」
「不名誉です」
狐はさっきから手を動かして何もないところを殴ってる。
「……何してるの?」
「まぁ、コレをやったら来るので。仔狐ならいざ知らず、良からぬ者も寄って来ますので」
オイ、悪魔!なんか来てるってよ!
「大丈夫ですー、キミたち、ニンゲンに食べられないように気を付けるですよー?」
誰に話してるの、誰に!
ウチには悪魔がいる。
「明日の晩ご飯はー!」
「さ」「か」「な」
このこっくり、魚好きだなー。




