悪魔がウチにおりまして・484
「ウチには悪魔が、悪魔が、悪魔が……」
「ニンゲンー!」
「連れ去られたニンゲン!現場に残された手がかり!ボクはニンゲンを助け出せるのか!」
「ミミ君!裏山の廃工場でコロッケが……」
「まさか、ニンゲンが……?
迫りくるマッシュポテト。ボクはニンゲンを助け出せるのか!」
「ミミ殿、3丁目の銭湯でコーヒー牛乳が!」
「まさか、ニンゲンが……?
どこに行った、フルーツ牛乳。ボクはニンゲンを」
「そろそろ止めようかー?」
さっきから何度も私が助けられてそうで何もしてないのよ、この子。
「なぜですか、ニンゲン!ここから15分続くというのに!」
私は15分間もまさか……と言われ続けるんかい。
さっきからPCから叫び声が垂れ流してれば文句のひとつも言わせて欲しい。
「しかもそれ、ちゃんと本人の声使ってるし」
友情出演、羊&狐。
しかも羊は上手い。狐は……うん、よく頑張りました。
「みんな意外とノリノリでしたー」
こういう悪乗り、好きだよねー。
音量を下げてもらい後ろから動画を見ていると妙に安っちい動画なのだが、逆にそれがB級感が出ていてむしろ好ましい。
「悪魔、動画編集とかできたのね」
現代に馴染みすぎていて私より進んでいる気すらする。
「この前バーに行ったときにあずさ2号に教えてもらってですね」
…………ザリガニのことか!?
やめろ、毎回名前変えるの!
「奥さんが在宅で動画編集してるんですって。その方法、タンク3号も覚えたんですって」
名前覚えてるなら統一しなさい!
「奥さんってあのネズミ?」
自分で言ってて違和感が仕事しない。タスケテ。
「ですです。奥さん、指が小さいからタイピングしやすいんですって」
キーボードの上を駆けまわるネズミの姿が頭に浮かぶ。
可愛い……くない。
「完成しましたー。ニンゲン、見てくださいー」
「とりあえずラストだけね」
15分も見てられないっての。
「えー。あいー」
悪魔がPCをこちらに向けてクリックをした。
『映画・ウチあく!ニンゲンとミミの!コロッケ大爆発!来週もまた見て欲しいですー!じゃん!けん!ぽん!潜水艦ですー』
……ナニコレ?
「いろいろ参考にしてみましたー」
「絶対、怒られるよ?」
ウチには悪魔がいる。
「捕獲ボールも入れるべきでしたー?」
「一番ダメ」
怖いもの知らずの悪魔が。




