悪魔がウチにおりまして・482
ウチには狐がいる。
さっきから変なポーズをとっている狐が。
「ほっ。はっ。せいっ」
狐がゴザを引いて、一定間隔でポージングをしている。
「ごんちゃん、新しい宗教ですかー?」
悪魔がセンシティブなことをおっしゃる。
野球・政治・宗教の話はタブーって知らないのか。
「……ヨガです」
顔がチベットに行ってる。
そりゃヨガのポージングを宗教と言われたらそんな顔もするよね。
「ヨガってアレです?気を練ってかめかめどーん!出すヤツです?」
違うからとりあえず叱られてこい。
「狐ちゃんがどこでヨガ習ってるのか気になる」
この姿の生き物が魚のポーズとかしてるのシュールすぎるのよ。
「さすがにお外では教えて貰えないので。通販で本を買いまちた」
そうは言ってもヨガはニンゲンに対して作られたもの。
狐の姿形で効果があるのかしら。
「ごんちゃん、なんでヨガなんか?修行でいつも似たようなことしてるじゃないですか」
狐の修行とヨガって同じものなのか……。
「……最近、太ってちまって。ヨガにはダイエット効果があると聞きまちた」
太った……?
「見た目変わらないけど」
「体重が300グラムも増えまちた」
300……?
そんなもの誤差でしょうに。
「ごんちゃん、それはまずいです、痩せましょう」
悪魔が真面目に頷いている。
そこまで深刻になること?
「ニンゲン、ボクらの体重、いくつくらいと思ってます?」
「知らないわよ。持ったこと無いもの」
こいつらが体重計ってるの見たことないし。
「某前まで6キロでちた」
やっぱり軽いな。
「ニンゲン、考えてみてください?今のごんちゃんはニンゲンが体重60キロくらいとして、3キロ増えたのと同じですよ?」
それは一大事だな?
「ミミ殿、喩えとちて良いのです。良いのですが、某も泣きますよ」
確かに狐の目には涙が浮かんでいる。
「ニンゲン!ごんちゃんに謝るです!」
アンタだよ。昨日から泣いている子あやしてばっかりじゃないか。
ウチには悪魔がいる。
「ごんちゃん、このヨモギモチで機嫌直すですー!」
「某が今、節制ちてるのに……」
地雷踏んでるんじゃないよ。




