悪魔がウチにおりまして・481
ウチには悪魔がいる。
物に釣られやすい悪魔が。
「ただいまー」
「お帰りですー」
「お構いなくー」
ひとつ声が多い。
リビングに進むと悪魔と羊の担当さんが呑気にお茶してた。
「なんで居るの」
「立春ですので」
答えになってないんだよ。
「ニンゲン!なんでそんなに担当を邪険にするのですか!良いじゃないですかボクが友だちを家に呼んでも!」
必死に庇う悪魔。
ちらりとテーブルを見るとそこにはたい焼きが山のように盛られている。安いヤツめ。
「安くないのです!ここのたい焼きは1個300円もする高級品なのです!それをこんなにたくさん……ニンゲンは贅沢なのです!」
「ニンゲンさんも食べますか?美味しいですよ」
あなたにニンゲンと呼ばれる謂われはありません、あなたもにんげんでしょう。
「細かいことはいいんです。そんなこと言ったら私はあなたのこと担当してませんよ?」
ニヤリと頭からたい焼きをかぶりつく担当。
ええい、苦々しいヤツ!
「ニンゲン?たい焼きは甘いのですよ?それに苦いコーヒーを合わせるから最高なのです」
「あ、毛むくじゃらー。私もおかわりー」
「あいー」
ぽきゅぽきゅとキッチンに向かう悪魔。
良いのか、悪魔のプライド。
「ねぇニンゲンさん」
「なに、担当さん」
ここまで来たら担当で通させてもらうからね。
「どうすれば牛さまは私に振り向いてくれますか?」
「無理なんじゃない?」
キッチンからカシャーンと金属の落ちる音がした。
すっ飛んでくる悪魔。
「担当!担当!ニンゲンは熱があって頭が痛くて足が水虫で意識がもうろうとしてるんです!今言ったことを信じてはなりません!」
途中意識に関係ないとばっちりがあったけど?
「ふ……ふふ……やっぱりぃ!?牛さん私のことガン無視ですよぉ!!」
悪魔が額に手をやるとそのまま俯いていく。
「ニンゲン、謝って。真実は時として刃物より深く抉るですよ?」
泣き叫ぶ担当を無視しながら悪魔はため息を吐いた。
「もしかして、悪魔って相談に乗ってた?」
「たい焼きでも無ければやってられんです」
コイツ、意外と苦労してんだなぁ。
ウチには悪魔がいる。
「担当、これでも飲むですー」
それ、ウイスキー原液よね?




