悪魔がウチにおりまして・480
ウチには悪魔がいる。
盛大に豆を撒いている悪魔が。
「鬼はー内!福はー外!」
いや、福もウチに入れなさい。
そもそも鬼を追い払う豆を撒いてていいのか、悪魔族。
「煎り豆は美味しいですねぇ」
牛がこれ見よがしに豆を食らう。
煽り方が絶妙でムカつく。
「ほら、ニンゲンも豆を撒くのです!撒けば撒くほど福が遠ざかるのですー!」
嫌だよ?
「あんなアホと良く仲良くできてるわねぇ」
福サイド、狐とクモに話を振ると諦めたように目を細める。
「最初100年くらいはこそばゆかったですが、こう長年眺めていると風物詩のようでちて」
一心不乱に豆を撒く悪魔が風物詩ねぇ。
「クモはー?」
クモと悪魔の付き合いはまだ短いはず。
それでもクモは諦めたように紙にお絵かき。
『いってなおらない』
クモに諦められてるよ!?
「まぁでも、ミミ君が『鬼は内』してるのって先生の影響がありますよね」
羊の言った先生っていうのはクリスマスに来たなまはげのことだよね。
「さすがに恩を受けた相手を追い出すようなことはできないでしょう」
そうそう、なんで羊もなまはげのこと「先生」って呼んでるんだろうね。
「話せば長くなります。その昔」
「長いならいいや」
私がばっさり切ると羊は牛の隣で豆をつまみ始めた。
なによー私が悪いってのー?
「ニンゲンさん、時々ヒトの心無いですよねー。こういう時は聞き流しながら話させてあげないと」
悪魔からヒトの心無いって言われた!?
その聞いてないのもそこそこヒドイと思うよ!?
「いいんです、どうせ私の話なんて……牛さん、この豆美味しいです」
「でしょう?今日のために丹波から取り寄せました」
そんな良い豆を盛大にまき散らしてるやつがいるんですよ?
「大丈夫、ミミさんに渡したのはスーパーで買ったやつです。さすがに捨てる豆なのに良いのは渡しませんよ」
この牛、ぬかりないぞ。
「さ、ニンゲンさんもどうぞ。歳の数ですと300個くらい?」
「しばくわよ?」
豆を撒き終わったらみんなでお掃除。
うぱ、食べちゃだめだよ?




