悪魔がウチにおりまして・478
ウチには悪魔がいる。
通販に翻弄されている悪魔が。
狐のしっぽをブラッシングしているとチャイムが鳴る。
「どなたですか?」
「宅配便ですー。和久井ミミさんのお住まいでお間違え無いですか?」
無いですけど。
悪魔のニンゲン名を言われたら開けるしかない。
「サインお願いしまーす」
「本人じゃなくても良いですか?」
「大丈夫でーす」
宅配便のお兄さん、軽いですね。
「そうしたらどこに置きますか?」
「玄関に置いておいてください」
私の答えにお兄さん苦笑い。
「……置けますかね?」
嫌な予感。
奥から台車をコロコロしてくると、たくさんの段ボール。
「……何箱でしょう?」
「えっと12箱ですね」
多いよ!置けるわけないよ!
「結構重いですか?」
「いやー、軽かったんで。ただ大きいので置けないかなって」
ひょいっと持ち上げて玄関に箱を置く。
少しずらそうとしたら確かに軽い。
「これで全部ですね、ありがとうございましたー」
大きな割に軽い箱12個。
中身は開けるまでもなくわかった。
なぜなら箱の横にしっかり書かれていたからである。
うまいスティック、わたわたガムガム、ももの山・くりの里、トリメン、ダイコンコメポンetc.
要するに駄菓子モリモリです。
「ニンゲン殿、そんなにお菓子が食べたかったので?」
狐は段ボールをすんすんと嗅いでいる。
「悪魔が買ったみたい。置く場所どうすんだろう?」
ぶっちゃけ邪魔である。
駄菓子だからそんな高くないんだろうけど。
「ただいまですー……あー!届いたですね!」
クローゼットが出てきた悪魔が飛び跳ねながら段ボール群に飛び込んでいく。
「……悪魔、ちゃんと自分で管理するのよ?」
「管理?明日には送るので無くなるですよ?」
この量!?
「こんな量をどこに?」
「なまはげのおじさんのところですー。おじさんの集落にはたくさん子どもがいますから」
……悪魔が、他の子にお菓子を上げる!?
「ニンゲン、ボクを何だと思ってるです?おじさんにはいつもお世話になってますからー」
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲン、小分けを手伝ってほしいですー」
「私にも1セットくれるならね」




