悪魔がウチにおりまして・477
ウチには悪魔がいる。
懐紙を咥え、打ち粉を打っている悪魔が。
それだけで何をしていたのかわかる人はそれなりに教養がある人だろう。
悪魔が日本刀を持っているという状況、遠慮なく張り倒したくなる状況である。
「悪魔!どこから盗んできたの!」
この前警察に捕まったばっかりでしょう。
凶器を持っているので殴りにもいけない悔しさ、どう鎮めてくれようか。
「……ニンゲン、どうしたです?」
しっかりと刀を鞘に納めてから話す。
そうよね、サビるもんね……じゃなくて。
「この刀はちゃんとぽんちゃんからもらったです」
あのモグラ!こっちのルールを知らんのか!
「その名も、土竜丸」
「……土竜、モグラって読むの知ってる?」
悪魔は苦笑い。
「知ってます」
知ってましたか。
あのモグラ、普段絶対に自分のことタヌキって言い張る癖に!
そんな時クローゼットから視線を感じる。
そこにはタヌキ、手には「私が打ちました」というプラカード。
打った!?
「ぽんちゃーん!言われた通り粉をぽふぽふしたですー!打ち粉ってものがわからなかったので小麦粉で……げふぅ!?」
モグラが悪魔に向かって砥石を投げた。
その投げたものが悪魔の顔にめり込んだのちにわかるほどの速度だったのは見事としか言えない。
「打ち粉は、その石を削れば出てきます……サビたらどうするんですか……!」
モグラ、相変わらず自分の作った物へのプライド高いなー。
ぽろりと砥石が悪魔の顔から鼻血ぶーである。
「ぽ、ぽんちゃん……痛かった、痛かったですー!!げふっ!?」
「痛くしたんです。反省しなさい」
悪魔の絶叫の最中に飛び蹴り。こんなに身軽でしたっけ?
ちらりとクローゼットを見るとイモ虫が「私が育てました」というプラカードを……待て、その短い足でどうやってプラカードを持ってるの?
「考えちゃダメですよー。所詮はフィクション、気にしたら負けです」
本人が言うな!腕を組むな!認識がバグるだろ!
「ニンゲン、ティッシュが欲しいです」
悪魔は上を向きながらふらふらして……鼻血を刀に垂らした。
そのあとの惨劇は、私の口からは告げられません。
ウチには悪魔がいる。
「ぽんちゃん!?ギブ!ギブですー!!」
モグラに逆エビ固めを食らっている悪魔が。
……痛そう。




