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悪魔がウチにおりまして・472

ウチには悪魔がいる。

甘いものが好きな悪魔が。


「ただいまー……」

「ニンゲン、お静かに。お点前の最中です」

家に帰るなり、悪魔からそんな注意を受ける。

ここから見えないということは、和室に居るのか?

靴を脱ぎ、和室に向かうと狐とクモ、なんならうぱまで正座している。

クモの正座って、脚大変なことになりそうなんだけど。

「どういう趣で?」

「実はですね、それがちがお茶を点てていたところ、ミミ殿もやってみたいと」

この悪魔、凝り性だからなぁ。

「そこ!静かにするです!」

あんたの方がうるさいよ。

「で、あんたお茶なんて点てられるわけ?」

詳しくは知らないけど難しいって話はよく聞く。

「失敬な!お茶は作法ではなく心です、ねぇごんちゃん!」

「ミミ殿、さっき始めたばかりなので……」

その腕前は推し量るものでありますな。

「クモ、そんな風に座って疲れない?」

8本ある脚を器用に畳んで正座っぽく見えるクモ。

2本は手扱いでいいのに。

対してうぱはどうやら足がしびれたらしく微妙に振動している。

「できました。それではどうぞ……」

悪魔はさっきから無心にしゃかしゃかしていたお椀をこちらに渡してくる。

「ささ、ニンゲン殿、どうぞ」

待て。私が毒見するのかい。

「……飲まないのですか?」

やめろぉ?潤んだ瞳で見るんじゃないよ。

しかし、考えてみたら狐監視の元お茶を点てていたなら変なものを混ぜるタイミングは無かったはず。

「い、いただきます……」

意を決し、器を持つ。

なんでそんなもんに意を決さねばならんのか。

ごくり、とひと口。

く……やられた!やはり悪魔なんか信じてはいけなかった!

「甘い……」

なんで抹茶なのに甘いんだよ!

てっきり苦みが来ると思ってたから舌がバグったのかと思ったわ!

「ニンゲン、美味しいですか?抹茶ラテ!」

「利休に怒られろ」


ウチには悪魔がいる。

練乳をぶち込んだかのように甘いお茶を点てる悪魔が。

「これはこれで……」

小動物たちはとても喜んでおりました。

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