悪魔がウチにおりまして・471
どうも、ザリガニです。
今日も元気に雇われ店長してます。
え?牛さんが店長じゃないかって?
去年まではそうだったんですよ、でも牛さんがニンゲン体になるの面倒過ぎて一切店に来なくなりましてね。
オーナーのごんさんと相談した結果オレが店長、牛さんが係長、オレが店長ってことになりました。
ただ、バーで係長って必要なんですかね?絶対要らないと思うんですけど。
で、営業は基本的にオレ。さらに従業員まで追加で雇って。
そのお陰でここがブラックって知れてよかったなぁ……。
ちなみに従業員はどっちもニンゲンで男の子と女の子。
いやぁ、別のヒトがいるって楽ですね。
「ねぇ、聞いてますぅ?」
「はいはい、聞いてますよ。溝口さん」
こうして常連のクダも聞けますし。
いや、聞きたくないんですけど。このヒト聞いてないと暴れるんで。
出禁にしても良いんですけど、3日に1回来て5桁使ってくれるんで。
なんでそんな羽振り良いのか、何してるのか怖くて聞けないっすけどね。
「また好きなヒトに軽くあしらわれたんでしょ」
どうせいつもその愚痴なんで。
……もしかしてここに来てる時って、振られる度に来てるってこと?
バイタリティすごいっすねぇ。
「そうなんですよぉ、いっつも相手にしてくれなくてぇ」
「辛いですよねぇ」
当たり障りないところでゆらゆら躱さないと面倒なことになりそうです。
「なんで避けられてるんですかねぇ、こんなに好きなのにぃ」
原因は一言なんですよねぇ、距離感。
初来店からこんな調子、いうて思い入れの無い店のニンゲンにコレなら、好きなヒトならもはやぶっ壊れな感じなんでしょうね。
「この前も季節ものの美味しいイチゴを狩ってきて一緒に食べようと思って朝からたくさん摘んできたのに……」
あぁ、買ったんじゃないんですね。
「それなのに彼、『イチゴってタネが歯に挟まるから嫌なんですよねぇ』って受け取ってもくれなくてぇ」
だからっていって、イチゴつまみにウイスキー飲むのやめません?
他のヒトいないから良いですけど。
それにしても、なんかさっきマネした喋り方、どこかで……ってか、しょっちゅう聞いている気がするんだよなぁ。
「ねぇー。私女として魅力無いぃ?」
「妻がいるんで勘弁してください」
どっちに答えても地雷なんで。
「マスター、ロックで」
「おかわりですね」
こうして閉店まで居るんだろうなぁ。
「……ボクの出番が無い!?」
「メタいこと言わないの」




