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悪魔がウチにおりまして・470

ウチには悪魔がいる。

たまに放置したほうが良い悪魔が。


「ニンゲン、ボクはそろそろ月に帰らなければなりません」

「帰れば?」

「引き留めても無駄です、ボクは……え?」

悪魔はてっきり引き留めてくれるのだと思ったのだろう、目を真ん丸にしてフリーズしている。

「え?ボク、月に帰っちゃ……え?」

「いや、だから帰ればって。ねー、クモー?」

急に話を振られたクモは小さく飛び跳ねる。

そして脚を振っているあたり、勘弁してほしいらしい。

「どうせさっき読んでた本に影響受けただけでしょ?」

テーブルの上には「かぐや姫」の児童書。

なんでも読むんだな、コイツ。

「もしかしてボクも竹から生まれたかもしれないじゃないですか!」

そうなると私は翁なんだよ。

「こうなったら仕方ないです、ニンゲン!団子をこさえるです!これから鬼退治ですー!」

どっちかと言うとアンタ鬼サイドだよ。

(いつもミミがすみません……)

その声はなまはげおじさん!クリスマスだけのご登場かと!

ところできび団子ってどう作るの?

「よしんば作ったとする、誰をお供にするつもり?」

たぶん桃太郎インスパイアなら犬・猿・雉のお供が必要になる。

その3匹をどう見つけるつもりだろうか。

「えっとー、ごんちゃんとー、ニンゲンとー、サムちゃん!」

……悔しい!ちょっと似てるのが悔しい!

「って誰が猿じゃ」

悪魔の頭にチョップを入れると「みっ!」と鳴いた。

「……そうでした、ニンゲンには鬼役をやってもらわねば」

役って言い切ってるし。

それはそうとして、今晩のおかず1品減らすのでそのつもりで。

「ミミさーん?この玉ってどこに置いておけばいいですー?」

のんびりと牛がクローゼットから入ってくる。

手にはぴかぴかの玉。

まさか。

「ちなみに経費落ちます?最近の龍族ってせこくなって。これひとつで10万悪魔ドルですって、信じられませんよねぇ」

「ニンゲンのせいでそれ必要無くなってしまったのですー。牛さんの持ち出しですー」

今度は牛がフリーズ。

絶対私のせいじゃないし、こっちに涙目を向けないで欲しい。

「……こんにちは、仲直りってどうすればいいですかね」

今日は騒々しいな、今度は羊かよ。

「オーロラソースを許しても、私が許さないと言われてしまって……おや?牛さん、それは?」

「ミミさんのせいで無駄になった龍玉ですけど」

「買い取ります、これで許してくれるでしょうか……」


ウチには悪魔たちがいる。

「神ちゃん、キラキラしたもの好きですからー」

仲直りしてくれ、天変地異が起きる前に。

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