悪魔がウチにおりまして・467
ウチには悪魔がいる。
神妙な顔して頬杖を突いている牛が。
「アレはかつて、私が牛と呼ばれていた時の話です」
「今じゃん」
思わず突っ込んでしまった私に、牛はすっとわらじを乗せる。
持ってきたの?わざわざ?このために!?
「これが出来たので満足です、じゃ」
「待てい」
そんな下らないことだけをしに来たのか、アンタは。
頭にわらじ乗せられたことより、行動を読まれていたことに腹立つ。
「えー、だって最近私にかまってくれないし。店にも来てくれないじゃないですかぁ」
店っていうと……なんだっけ?
「ほら、忘れてる。サガリですよ、サガリ」
「……牛殿、蜂の巣」
隣で聞いていた狐が目を細めて見つめている。
アンタも自分の店の名前忘れているじゃない。
「最近はメタング18号殿の活躍で従業員増えまちたからね。某左うちわでちて」
……ザリガニ、名前を憶えてもらえなくても強く生きろよ。
「なんか最近子ども増えたみたいで。私の収入減らしてザリさんに9割あげることにしました」
実際アンタはほとんど店に顔出して無いなら1割でも貰いすぎでしょうよ。
「失敬な。ちゃんと週1回店に顔出してますよ」
「え、意外」
「某も同じく。牛殿、ちゃんとお仕事なさってたんですね」
今度は牛が目を細めた。
「あなた方、私のことなんだと思ってたんです?ちゃんと定休日に行って、掃除してるんです」
営業には立ってないのかい。
「……変化って疲れるんで。掃除だけならこのままでいいじゃないですか」
「ウチのアホはホイホイ変化してカラオケとか映画とか行ってない?」
この前もフリータイム飲み放題(昼から酒)に付き合ったし。
「ミミさんは欲望に忠実ですから。この前は焼き立てのタコ焼き食べるために変化してました」
……理由が軽い。
クモも何か言いたげに降りてきた。
「ふむふむ。今朝ミミ殿は羊殿の最新刊を買うために朝3時から本屋に並びに行ったらちいです」
だからさっきから居なかったのか!?
「……もう11時なんだけど?」
「ミミさんのことだから居ても立っていられず、即読んでるんじゃないです?」
あり得るなぁ……。
「たでーまです!そこで担当とばったり」
瞬間牛が悪魔を蹴飛ばし、ドアが閉まった。
「なぜ?カギ?チェーンロックまで?あーけーてー」
悪魔よ、アンタが悪い。




