悪魔がウチにおりまして・463
行列には悪魔がいる。
こんなに待たないといけないなんて……。
時は少し遡る。
「ニンゲン、今日お昼は要らないのですー」
あの食い意地の張った悪魔が、ご飯を要らないだと?
「まだ熱でもあるの?」
「違うのです、ラーメンを食べに行こうかと」
それなら安心。
今日は他の子もいなくてまだ準備もしていない。
「せっかくなら私も行こうかな」
「……ニンゲンも来るです?なら急いでください」
まだ11時前なのに?
というわけでラーメン屋に着いた時間が11:15。
それにも関わらず既に20人以上並んでいる。
「ウソでしょ」
「だから言ったです、急ぐって」
地雷子モードで頬を膨らまして最後尾に並ぶ。
悪魔と並んだあと次々に人が並んでいく。
「そんなに人気なの?」
「そうなのです。この前できたばかりなのですが、すでにおいしいナビの星4.2なのです!」
ほう、それはすごい。
「で、開店時間は何時?」
「11:45です」
30分も待つの!?
開店して15分、長い列が進んで行き、ついに店内に。
券売機で食券を買ってカウンターに。
「お好みは?」
「カタメ普通、脂は背脂に変えてください」
50円玉をカウンターに乗せる悪魔。
相変わらず呪文なんだよな。
「全部、普通でお願いします」
よくわからない+初めての店で味を変える挑戦はできません。
「おまちどうさま」
ふたりのラーメンが運ばれてきて割り箸ぱきん。
あれ?私が頼んだの普通のラーメンだよね?
写真には乗っていない味玉がスープに浮かんでいる。
「すみま―」
「ニンゲン、いけません」
悪魔は麺を食い切り、すっと手で私の言葉を遮る。
「その卵は食べてしまうのです。こんな混んだ店の中、ちゃんと卵を頼んだ人が返金を求めたらどうしますか?」
んなアホな。
「そして1度出してしまったら捨てるしかありません。生まれなかったひとつの命、血肉として生きてもらいましょう」
重いんだよ、卵1個に。
「……いただきます」
その日のラーメンは美味しかった。
「卵、美味しかったですね……」
悪魔の性格が悪いんだよ!




