悪魔がウチにおりまして・462
ウチには悪魔がいる。
目を閉じて座禅を組んでいる悪魔が。
……あ、組み替えた。
どうやら足がしびれたようだ。
「ニンゲン、聞いても良いですか」
すっと目を開き、中空を見て尋ねてくる。
「なぁに?」
「ボクは、何者なのでしょう」
「悪魔」
私の即答に悪魔は足をだんっと踏み込む。
「ニンゲン!そういう意味で……ぬおぉぉ……これは、呪いですか……」
ただのしびれでしょうに。
「そういう意味では、無いのです……。ボクは種族としては悪魔ですが、何をする者なのでしょう」
要するに今の悩みは就活中の大学生ってことでいい?
「ニンゲン、その発言はいろんな人を傷つけます」
珍しく悪魔は静かに、しかし重く忠告してくる。
「何者なのかわからない者に正論や生ぬるい共感はいけません。なぜなら彼らは取り残されたと思っているからです」
薄ーく目を開けた悪魔は徐々に近付いてくる。
つま先立ちなのはしびれがまだ抜けていないんだろう。
「そんな悩める漂流者から板を取り上げたらどうなります?沈みますよね?必死に浮かぼうとしますよね?そうすることで周囲ごと沈むことも選ぶわけです」
近い近い。
角めり込ませるんじゃない。
「ことと次第では自爆を……。ああ、恐ろしい」
「とりあえず適性距離にならないなら、晩御飯抜きです」
素直に引き下がり、自分が突いていた部分をさすさすする。
いらない。
「これでどうかよしなに……」
そんな言葉、どこで覚えたんだか。
「結局ね、アンタはアンタでしかないんだから。無理に決めることないんじゃない?」
「そうですかねぇ」
悪魔は再び座禅を始めてしまう。
「ニンゲンさん、今日はつゆだくの親子丼をですね……おや、ミミ君。そんな座り方したら立てなくなりますよ」
さっきなってたから平気だよ。
「……なるほど。自分ロスしてるわけですね」
私の話を聞いて、うんうんと頷く羊。
「ミミ君、そんな時は考えてはいけません!これが全てを教えてくれます!」
羊が腹部のもこもこから取り出したのは無数の鉄アレイ。
どうしまっていたのか、全く分かりません。
「ひ、羊さん、まさか」
「れっつブートキャンプ!さぁ、筋肉を絶叫させましょう!」
ウチには悪魔がいる。
「ミミ殿、そんなサビたぶりきのような動きでどうちました?」
「狐ちゃん、そっとしておいてあげて」
今夜のおかずはたんぱく多めにしてあげましょう。




