悪魔がウチにおりまして・460
ウチには悪魔が2匹いる。
角のあるものとないものが。
「にんげん、久しぶりデス」
角の無い悪魔が挨拶をしてくる。
「久しぶり……?アンタ、メカクマ?」
悪魔を模したメカ「メカクマ」
しっかりした自我を持っていて、何なら悪魔よりもちゃんとした性格をしている気がしている。
「ずいぶん話すの滑らかになったわねぇ」
旅に出る前は片言でメカメカしいカタカナ語だったのだが。
「……目が疲れまセン?」
身も蓋も無い理由だった。
「メカちゃん、いろいろどこ回ってたです?」
一応作った当人なのに行った先わかってないのかよ。
「そうですね。マリアナ海溝に潜ってタイタニック見てきマシタ」
無いから、そこにタイタニック。
「モデルがモデルだけにテキトーねぇ」
「ニンゲン!?そんな風にボクを思ってたです!?」
普段の行動を考えたら妥当でしょう。
「さて、今日のお昼は……やや!?ミミ君がふたり!?」
羊、たぶんそれ前もやった、覚えてないけど。
「ヤギさん、相変わらず抜けてますねぇ。そういえば結婚したんデシたっけ?」
そういえばメカはヤギって名前と思ってるし、結婚後会うの初めてだったわね。
「そ、そういえばミミ君の趣味でロボット作ったんでしたね」
羊の発言に2匹はきらりと目を光らせる。
「ヤギさん、その発言は見過ごせまセン」
「そうです、この子はロボではなくメカです」
……何が違うのだろうか?
「ロボは、自律起動です」
「ボク待つのデス。ボクは自律起動してます」
「アレ?リモコンどうしました?」
「……あっ」
あっじゃないのよ。
「失くしたですか!?自分を操縦できるリモコンを!?」
「だって誰も使わないでしょ?たぶん火山で耐熱実験してるとき溶けたデスよ」
発想が当人のそれと一緒だから始末に負えない。
「溶けるわけないです!ボクと同じ素材で作ったんですよ?もしそれでリモコン溶けるなら本体も溶けてるです」
とんでもない物体で作られてんだな、このメカクマ。
「無くしたら何か困るの?」
2匹の悪魔は顔を見合わせる。
『さぁ?』
……少しは困れ?
ウチには2匹の悪魔がいる。
「お腹にしまっておいたの忘れてマシた」
「さすがボク」
忘れるな、そんな身近に入れてて。




