悪魔がウチにおりまして・459
ウチには悪魔がいる。
「ニーンーゲーンーさーんー」
牛、なんか遅くない?
なぜか話すスピードが異常に遅い牛。
全部忠実に聞いてたら時間がいくらあっても足らないので通常のスピードで聞いてもらいます。
「アンタは普通に話しているつもりなんだ?」
「そうです。でもなぜか話し方だけ遅くて」
確かに腕を組んでからゆっくり聞こえる声。
動きとちぐはぐだと違和感が半端ない。
「牛殿、コレを読んでください」
「隣の客はよく柿食う客人で、ウチの客もよく柿食う剣客だ。何やらせるんですか」
本当だよ、狐が最近アホに毒されている。
「ふむ、これでも戻りませんか」
戻るわけないでしょう。
「まぁ、困ってるわけじゃないんで私は構いませんが」
こっちが困るんだよ、主に会話時間で。
「ちかし、原因がわからない以上対処ちようもございません。牛殿、何か心当たりはありませんか?」
牛はアゴに手をやる。
「そうですねぇ。昨日納豆を食べたせいでしょうか?」
んなわけあるかい。
「それかもちれません。ニンゲン殿、解毒のために石鹸を食べさせてみましょう」
正気か、このケモノ。
「ごんさん、なんで石鹸?」
「ねばねばには滑りをよくすれば良いのかと。牛殿なら飲めるかと」
その発想、酷すぎる。
「さすがに石鹸を食べるのは生物辞めてるでしょう。サラダ油飲んだらだめですか?」
その油、ウチのシンク下から持ち出すつもりじゃあるまいな。
「ただいまですー」
こんな時に普段はトラブルの元凶、悪魔の帰宅。
「ニンゲン、とっても無礼なこと考えてませんか?」
気のせい、気のせい。
アンタは読心術は使えない、いいね?
「なぜか私が喋るの遅く聞こえるらしくて。USB抜き差ししても、再起動しても戻らなくて」
中の人の事情を代弁させるんじゃない。
「……あれ?牛さん、背中に虫が」
ペリっと何かを剥がす悪魔。
「アレ?戻りました」
「コレ『スロウスバチ』ですね。刺されている間声だけが遅くなるんです」
……変な虫、じゃなくて。
「牛、刺されてて気付かなかったの?」
「虫程度じゃ気付かないでしょ?」
ウチには悪魔がいる。
「ちなみにニンゲン、刺されたら普通死にます」
物騒な虫、連れてくるな!!!




